【体験型観光が日本を変える368】日本の労働意欲減退を憂慮 藤澤安良


 沖縄奄美地方に二つの台風が相次いで通過したが、その一つがUターンして前線を刺激し、秋田県や山形県、そして能登半島に線状降水帯を居座らせる結果になり、能登半島は元日の地震に続いての大惨事となった。土砂崩れや河川氾濫などで流され倒壊する家屋など、豪雨災害の恐ろしさをニュース映像から改めて確認することになる。

 自民党も新体制が発足するが、国会解散よりも被災地の復興を急いでほしい。いくつかの宿泊や温泉施設、あるいは観光施設に関わっているが、台風接近から台風一過まで1週間近くを要したら、1軒の小さな宿で数百泊のキャンセルがあった。

 猛暑では「外出や野外での活動は避けてください」等と天気予報やニュースで流れると、外出や旅行のモチベーションは下がる。台風や大雨は観光産業に大きな影響を与えている。業績悪化を天候ばかりを言い訳にしていては情けない。

 しかし、誰もが自分のせいにはしない。知恵と工夫と行動力による課題解決や現状打破を期待しているが、決められたこと、指示を受けたこと以外はやらない。それどころかそれすらもしない人間のなんと多いことか。

 これは1組織だけの問題ではない。日本の国際競争力が低下し生産性の低さが2022年のデータでOECD加盟38カ国中の31位だった。G7で最下位であり、1970年以降で最低の順位だ。

 その原因と思われるのは「仕事や会社への熱意、貢献意欲」だ。米ギャラップ社が発表した23年版で日本は145カ国中で最下位だった。高い熱意や意欲を持つ社員はわずか5%で、4年連続で過去最低となっている。

 9月にあった2回の3連休も大きなプラスにはならなかった。その時、新宿や渋谷は若者でにぎわっていた。もちろん地方からの観光客もいたとは思うが身なりや持ち物からその多くは首都圏在住者である。過去にはやった「安近短」の再来であり、便利で何でもあり、何でも食べられる都市型観光になっている。

 インバウンドも同じような傾向にある。海外旅行も激減している。インバウンドはコロナ前の19年を上回る年間3500万人ペースである。海外旅行は円安、外国での物価高、日本人の所得が上がらないことから半分の1千万人ペースである。パスポート所持者も日本は17%と、米国の50%、台湾の60%、韓国の40%に比べて極端に少ない。

 19~25歳男女に向けたアンケートで海外に(1)行きたいとは思わない57.3%(2)社会情勢が不安なので23%(3)行きたい19.7%となり、パスポート所持率と符合する。

 そんな中、日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行会長は若者の初回パスポートを無償化するように政府に要請するとしている。きっかけにはなると思う。

 労働意欲や生産性の面でも他国を訪ねて理解し「負けてられない」と感じてくれることを期待している。さらには、日本人客もインバウンドも日本の地方に誘致すべき好機である。しかし、何も動かなければ何も変化はない。地方の行政と観光関係者のいっそうの奮起を期待したい。

 
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