【体験型観光が日本を変える375】SNS利用、年齢制限の動き 藤澤安良


 米国の大統領選でトランプ氏が勝利し、日本で言う組閣が始まり、報道によると、強い支持者や言いなりになりそうな御しやすい人物が、これまでの言動にいろいろな問題がありながらも選ばれている。

 日本なら“身体検査”に引っかかり、後の政権運営に支障を来すことになりそうだが、上下両院で共和党が多数であり、突破するつもりなのだろう。

 一方で日本は少数与党であり、諸課題について野党との協議や調整が必要となる。総理が議会の本来のあるべき形かもしれないと発言していた。

 当面、103万円の壁が問題となる。現状の税制のままだと約5兆円が地方財政への減収になるとの試算があり、知事からの異議も相次ぐ。
 すべては現状の税制の目先の小手先の変更からしか考えていない。壁などという言葉になっている時点で税制そのものが時代に合っていない。

 働く意欲にブレーキがかからず、働きたいだけ働けて、納めるべき税金は納め、救うべき人は救う。すべてをぶちこわすぐらいの覚悟で、時代に合った税制にすべく抜本的な改革が必要になる。何もかもがいい方に変われるチャンスが来たと思いたい。

 もう一つ注目の兵庫県知事選は県議会からの不信任により失職を受けた、出直し選挙で現職が再選する結果となった。東京都知事選でも話題になったSNSを駆使した選挙戦で若者世代の支持を集めた結果であるとの分析報道がされた。

 一方で、そのSNSの使用に各国で年齢制限を設ける動きが広がっている。豪州は近く国家として初めて16歳未満のSNS利用を禁止する法案を提出する。英国や米国の一部州でも議論されている。暴力的な動画などの有害なコンテンツやいじめから未成年者を保護する狙いがある。

 日本でも便利さの陰で、スマホなどの弊害は気づかないうちに人の心や生活の中に侵食している。ゲームなどの課金、過剰な画面を見る時間、それによる近視の増加、睡眠不足。学習時間、野外活動時間、コミュニケーション機会の激減、サイトやアプリによる男女関係や闇バイトなど非行への誘導も多い。多くの大人がだまされている中にあって、人生経験の少ない年代には文字面からの虚偽や善悪の判断は難しい。
 このほど、文科省から小中学校の不登校生徒数が34万6482人と発表された。その原因のひとつであるいじめも小中高合わせて80万件を超えた。いずれも過去最高である。

 いじめの方法も直接手を下す暴力よりも、ネット上で悪口雑言誹謗(ひぼう)中傷による、無視や仲間はずれ等他人をおとしめて、自分の存在感を獲得するという陰湿で非生産的な方法である。

 もっと分からないし、ついていけないAIの発展がある。どんどん、SNSやAIが普及すればそれは同時に、人間が考える時間、人と交流する機会、実体験する機会が減少することになる。ますます、人間力や人間性が退化する方向に向かうことになる。旅行が現代社会に貢献するためには、体験・交流・コミュニケーションを旅の必要な条件にするくらいの意識変化が必要である。


(観光経済新聞11月25日号掲載コラム)

 
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