今年も押し迫ってきたが、闇バイト強盗が起こり続けている中、家に現金はもとより、重要な資産や書類を銀行の貸金庫に納める利用者は多い。
そんな中、大手銀行で絶対安心だと思っていたその貸し金庫から60件で時価十数億円の窃盗があったとの報道があった。絶対大丈夫という安心神話が通用しない時代である。警備システムの課題もあるが、犯罪を起こさない人間教育を怠ってはいけない。
東京都内ではデリバリー配達員に暴力を振るったり、無人販売の万引きや料金箱の窃盗など、強盗・窃盗、暴力事件や交通事故や火災は相変わらず多く、世情が不安定である。
また、隣国の韓国では大統領が戒厳令を発令し、国会や住民の活動を制圧するため深夜から早朝にかけて軍が出動し大混乱が起こった。戒厳令は数時間で取り消されたが、大統領の弾劾を求める国会議員投票が行われるまでに至り、混乱は続いている。
日韓の関係が良好になり、航空便の便数が増え、渡航者が相互に増え続けている。海外渡航先としての今後が心配になる。
年末年始の休みは、カレンダー上の並びから最大9連休となり、旅行に出かけたいとするモチベーションは高まっているが、物価高、人手不足、インバウンドの増加が相まって、宿泊料金が高騰している。
神奈川県のビジネスホテルの調べでは、2021年に6054円だったのが、現在は同じ部屋で2万84円となり3年で3倍以上となっている。宿泊施設側の厳しい現状も理解はできるが、国民の多くが無理したりついてこれないようではミスマッチとなる。国内への旅行マインドを下げてはならない。
朗報もある。ユネスコが日本の「伝統的な酒造り」を無形文化遺産に認定した。杜氏が手造りでこうじ菌を生かした醸しの文化であり、日本酒、焼酎や泡盛をさしている。
私は世界や日本各地に行ってもビールもワインもウイスキーも飲んでいるが、結局日本酒が一番おいしいと思っている。また、地方には多くの酒蔵が頑張っており、それを応援したいと思い、旅先の地酒をいただくことにしている。
そのお酒に合うのが和食である。こちらも無形文化遺産に選定されている。和食と日本のお酒はいわば最強の組み合わせである。インバウンド客は和食に日本のお酒を求めて酒蔵にも訪問し、酒造りの工程や物語を深く理解し、ファンになり愛飲者になり、味覚を追いかける旅をしている。
目先の利益にとらわれ、食材調達の苦労の少ない輸入食材を使ったり、出来合いの業務用食材や冷凍食品を使用するなど、旅人のニーズに応えられていない宿泊施設も少なくない。
日本人も旅館・ホテルも自国の食文化に自信と誇りを持って、経済が他国に逃げないよう地産地消の徹底が不可欠である。地元食材にこだわってほしいものである。
日本の優位性は無形文化遺産が23件もあるように、固有の伝統の技や匠であり、季節感ある自然の美しさである。庭園や建造物にある調和でもある。日本の地域振興は国内旅行の推進である。
(観光経済新聞2024年12月16日号掲載コラム)