年末は旅客機の墜落や着陸失敗が相次いであり、多くの犠牲者が出た。一刻も早い原因究明と再発防止の対策が求められている。
事故の次の日、私の親戚が釜山から成田への航空便を、信頼感が薄れたとして、事故機の会社から別の会社に振り替えた。この航空会社は当日と翌日で数十万件のキャンセルがあったという。ただ、航空会社は選べても空港の施設までは選べない。安心安全や信頼感は観光産業の根幹である。年末年始の観光動向は国内81%、海外19%と海外旅行の割合が低く、航空機事故は海外への足をさらに遠のかせることになる。
一方、個人の観光消費が伸び悩む中で、国内旅行は物価高、人材不足も相まって、宿泊代金の高騰が目立ってきた。多くの国民の懐具合からかけ離れるミスマッチは観光振興にブレーキをかける。
予定されている中国人へのビザの条件緩和で中国人観光客の増加が見込まれ、インバウンドの拡大につながることは必至である。しかし経済効果は期待できるものの、手放しでは喜べない。ルールやマナーを守らない目に余る行動が気になる。日本の観光地が外国化し、日本人が肩身の狭い思いをしたり、人が集中する観光地でのオーバーツーリズムで地域の国民生活に影響を及ぼすことになる。
一方、庶民はOTAとにらめっこしながらリーズナブルな宿探しをする人がますます多くなるであろう。
受け入れ側の人材不足は深刻で、とりわけ、勤務時間帯が9時~17時の一般的な勤務時間とは全く違う宿泊施設の従業員や、2024年問題からバスの運転手の確保もままならず、5月、10月など修学旅行が集中する時期にはバスの確保が困難な日が多くなっている。
先頃、文科省は教育現場に向かって、なるべく集中時期を避けて修学旅行を実施するよう呼び掛けたという。中間や期末試験等の日程の兼ね合いもあり、修学旅行は現状の日程に落ち着いている。時期を変更するには、学校の行事日程を根本的に変えることが必要になる。
関西、関東、沖縄などは修学旅行が集中する行き先である。新幹線や航空機の便が多く、交通至便であり、神社仏閣名所旧跡やテーマパークも多い。ただ、個人旅行でも容易に行ける地域である。
旅行の時期を変える方法もあるが、それだけではなく、行き先を変える選択肢がある。日本の田舎は日程が取れる日が多い。
修学旅行が始まった時代から、交通事情や旅行機会の拡大など、社会が大きく変化した。現状の教育課題の解決に向けた教育効果の高い内容に見直すべき時である。行き先も日程も内容も全てを見直す時期に来ている。
ふるさと納税は多くの地域財源を稼ぎ出している。地方応援型のふるさと修学旅行があってもいいはずだ。すでに、自然体験、農林漁業体験や教育民泊により、誘客を実現している地域も多い。地方の三セクの宿等の活性化にも貢献する。
地方自治体の首長は修学旅行が来るはずもないと思わず、時代の要請を先取りし、財源と人材を確保し、受け入れ態勢整備に取り組むべき時である。
(観光経済新聞1月13日号掲載コラム)