【体験型観光が日本を変える382】人は人のいるところに集まる 藤澤安良


 米国のトランプ大統領が就任し、WHOを脱退するなど、いくつもの大統領令に署名し、山火事の被災地ロサンジェルスに出向くなど、精力的に動いた。私も関西、山陽、信州、北海道、関西、中部と飛び回っている。航空機にも新幹線にも高速バスにも乗っている。

 インバウンドは史上最高の人数と消費額になった。ビザ条件が緩和され、春節を迎える中国からの観光客は大きく伸びると思われ、インバウンド客の全体の数字を押し上げることになる。

 アニメの聖地や鎌倉江ノ電の踏切、富士山が屋根の上に見えるコンビニなどに極端に人が集中し、地元民の生活に支障を来すのは良くない。なぜ人と同じ場所やカメラアングルを求めるのか分からないが、人は人のいるところに集まるようである。私は、人がいない風景や景観が自分だけのように思えてうれしいのだが違うようだ。

 一方で、日本の伝統文化や工芸品を探し求めている。食事も地産地消の郷土料理が喜ばれ、先ごろ、日本の伝統の酒づくりがユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、日本酒や焼酎泡盛にも広がりを見せることになる。さらに人々は、アウトドアスポーツ、農林水産業、ものづくり、食事作りなどの体験プログラムにも参加している。

 日本人より日本の良さを理解して日本の魅力を探し、日本人との交流にも積極的であり、とてもうまく日本を楽しんでいる。旅の楽しみ方が1枚も2枚も上のような気がする。

 インバウンドの伸びに対して日本人の旅行需要は国内も海外も芳しくない。上がり続けている物価がさらに4月までに6千品目の値上げが予定され、それらを受けて宿泊、飲食、土産などの値上げが顕著である。しかし、それらに比例して可処分所得が上がっているわけでもなく、旅行に行くモチベーションが上がらない。

 スキーなどのウインタースポーツが売りの地域は集客ができるが、一般的には冬休みや正月を除く12月中旬~3月中旬は全国的に旅行客が動かない時期である。いくつかの宿泊施設の経営に参画しているが、赤字の施設が多い。

 特に、大浴場でお湯を加温する必要がある施設はその燃料代が足を引っ張る。春から秋の収支が、冬の赤字が少なければ、ツーペイであれば利益が確保できる。全国一斉に冬の旅キャンペーンをやるべきである。

 もうけなくても、人件費などランニングコストが稼げればいいというギリギリの価格設定で、日本の旅への動機付けをして、冬旅の文化を浸透させるべきである。それが、ゲームチェンジャーとなる。

 1月末、那覇で21度の日に北海道東の知床にいた。夜の食事店からホテルに帰る雪道はツルツルに凍り酔いが吹き飛ぶぐらい慎重に歩いた。氷点下15度にはなっていると言い、昼間の3度は「今日は暖かいねえ」とあいさつを交わしている。日本だけでも大きな差異がある。それが、気象風土、景観、暮らし、産業、飲食に変化をもたらすことになる。そんな冬の魅力発信が足りない。2月の上旬は沖縄に行くことにしている。


(観光経済新聞2025年2月3日号掲載コラム)

 
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