【体験型観光が日本を変える386】付加価値をどうつけるか 藤澤安良


 2月に入り2度目の大型寒波の襲来となった。北陸から東北までの日本海側は、例年より多い積雪のある中、再び大雪に見舞われた。交通まひが各地で起こっている。スキー場は恵みの雪とはならず多すぎる積雪に除雪に追われている。北信や北海道のスキー場にはインバウンド客が押し寄せている。

 一方で、日本人観光客は冬眠とまではいかないものの、極めて動きが鈍い。大雪はスキー関係以外の旅行目的にマイナスのイメージになることも影響する。昨日も高速バスで新宿に戻ったが、高速バス以外の観光バスはほとんど見ない。寒波の寒さは旅行マインドまで冷やしてしまう。

 そんな時こそ、日本の温泉文化が旅の目的になる。さらには、その土地でしか食べられない食文化が魅力となる。

 特に鍋料理は冬の寒さがあっておいしさが際立つ。百名山や棚田百選があるように、冬の旅行需要を喚起するためにも全国郷土鍋料理100選の食べ歩き旅行があってもよい。

 スタンプラリーなのか御朱印帳なのか、認定店で証明スタンプを集められるようにする。もう一段上のランクで、スタンプノートに自分の食べた料理写真を貼り込めるとさらに楽しいものになる。

 ラーメン屋台や飲み屋の屋台が全国各地には残っている。昭和レトロが見直され、今風の映えるなどという言葉で写真が出回る。若いお客の感想の中に、料理をする人の手際が近くで見られたり、料理人に直接話しかけたり、話しかけられたりするのが新鮮で楽しかったというとても興味深い反応がある。どうやら、人と話をするのはいやとも限らないことが分かっただけでもいい。

 私は居酒屋でも旅館でも料理について、刺し身の魚や米や野菜や果物等の食材生産地や料理方法などを根掘り葉掘り聞くことにしている。もちろん日本酒や焼酎のたぐいも同じである。つまりは、得体の知れないものを食べられるか、という思いである。

 当然嫌がられると思うが、知らない相手をおとしめることなく料理人に聞いたりして出所をしっかり知って相手に伝えることは互いにとってメリットが多い。つまりそれが付加価値である。どうやって、価値を伝え、理解し、喜んでその価値に対価を支払ってもらうかが勝負である。

 付加価値の見える化、心に響かせ方が、付加勝ち組の戦略になる。そして、何でも酔えばいい酒、腹がふくれればいい食事から、楽しく心が躍るような至福の時間の食事にすることが豊かさの象徴である。

 金額の高さではない。高級料亭は手が出ないが、私は赤坂に料亭に行く前に生産現場でもっと鮮度のいいものを食べているケースがある。旅の醍醐味(だいごみ)とはそういうものである。それが産地に足を運ぶ価値でもある。

 飲食店や旅館の経営に関わっているが、地産地消の徹底は地域振興にもなるが、鮮度と口に入るまでの物語と地域を応援するという気持ちが相まって顧客の満足度を高めることにもなる。温泉と食と交流が冬旅の貴重なコンテンツである。そこに付加価値の表現が加わることだ。


(観光経済新聞2025年3月3日号掲載コラム)

 
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