
3連休には日本列島にまた寒波が押し寄せた。3週間前の計画ではあるが、気温25~28度と暖かくて快適なマレーシアの首都クアラルンプールへ飛んだ。ペナン・ランカウイ・ボルネオ島のコタキナバルなど、それらのビーチリゾートへは全て訪れたが、クアラルンプールはいずれも経由地で1泊程度しかしていなかった。
日本でいうところのインバウンドの都市型観光を体験してみるため、フライト前後の空港2泊と市内3泊にすることにした。一流ブランドの高級ホテルが世界的に見て格安といわれている街だけあって、2ベッドルーム4人定員、バスルームとトイレがそれぞれ二つ、ダイニングテーブル、ソファー、キッチン、洗濯機乾燥機付きの38階で納得の1泊朝食付き4人で3万8千円である。
移動はモノレールや地下鉄などもあるが、日本の半額から3割程度のタクシーを利用した。屋根にあんどんが付いているタクシー会社は少なく割高と聞いた。登録したネットアプリから迎車場所と行き先を登録すると、すぐさま、3分後に赤の車体のナンバー1234が来るとの情報がスマホに届く。
渋滞具合などが加味され、代金は刻々変化している。往路880円が復路は1700円であったり、契約のボタンを押した時点の金額となるため、運転手は近道や渋滞を避けようと遠回りをしたりするなど、努力している。代金はカード決済である。
街中のショッピングモールもナイトマーケットの食事場所も活気とにぎわいがある。客の多さもあるが、ホテルのドアマンが6人もいたり、人手不足の日本とは違ってスタッフの多さも目につく。そして、何より若者の割合が多いと感じる。
食事代もほぼ日本の半額程度でハワイと大違いである。ホテルの朝食ブッフェは約100種類、街のフードコートは30店舗程度あり、1店が平均20種類のメニューを持っている。つまり、数百種類のメニューから自分の口に合うものを探し出すのは至難の業である。それを見つけ出すまでが修業である。
言い換えれば、おいしいものがないのではなく、おいしそうなものがないだけで、食べつくさずに評論するべきではないが、味の想像をしてしまい手を出せないでいる。日本に帰国後、新鮮なお魚の居酒屋で会食する機会があったが、そこでの、お刺身と地酒はとてもおいしいと感じた。
出張先から帰りの新幹線駅で、普段はおにぎり2個なのに思い切って駅弁のうな重を買い車中でいただいた。予想通りのおいしさだ。いずれも、至福の時間である。海外旅行も他国の良いところを大いに学べる機会であるが、日本の良さと課題を再確認する機会でもある。
日本の食事はインバウンド客からも認知されていることからも、観光の大きな商材である。同時に、それによく合う日本酒や焼酎や泡盛も商材である。そして、それの「和食」「伝統的な酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されており、世界のお墨付きである。日本の旅館・ホテルや飲食店はもっと食と酒にこだわり力を入れるべきである。
(観光経済新聞2025年3月10日掲載コラム)