【全旅連青年部特集】外国人材の雇用促進に向けて 全旅連青年部労務人材委員会菅原・小川氏に聞く


全旅連青年部の労務人材委員会担当副部長の菅原真太郎氏(大阪府・ホテルプラザオーサカ=写真右)と、委員長の小川尊也氏(神奈川県・一の湯=同左)

日本の宿泊業を海外でアピール 特定技能試験 仕組み変更し受験者大幅増

 深刻な人手不足の中で、宿泊業で働く外国人材を増やそうと、全旅連青年部の労務人材委員会が活躍している。同委員会担当副部長の菅原真太郎氏(大阪府・ホテルプラザオーサカ=写真右)と、委員長の小川尊也氏(神奈川県・一の湯=同左)に、両氏らが関わった「特定技能」の在留資格を取得するための試験の仕組み改善、海外での宿泊業のPRイベントについて話を伺った。

 

 ――「外国人材雇用促進のためのジョブフェア&マッチングイベント」を観光庁から受託して、各国で行っている。

 われわれ労務人材委員会が活動を始めた昨年、特定技能という制度はあるものの、宿泊業界の中であまり広まっていないという現状があった。

 原因として、特定技能の在留資格を得るための試験の実施数が少なかったり、旅館業について対外的にPRができていなかったりするところがあった。

 そこでわれわれを中心に、しっかり取り組んでいこうと活動を始めた。

 試験の実施数が少ないのはいくつかの要因があり、その仕組みを変えて、試験の実施数を増やそうと考えた。

 従来の運用から、プロメトリックという企業が提供するコンピューターベースで試験を行う仕組み(CBT=コンピューター・ベイスド・テスティング)をわれわれの試験でも採用できないかと検討をして、今年の春から実装した。

 プロメトリック社が各国に独自で試験会場を持っており、運用効率が飛躍的に上がり、そこを利用できる利点があった。ほぼ毎日、試験を実施できる仕組みになった。

 「試験を受けたいが機会がない」「いつ試験があるか分からない」などのクレームを現地から受けていたのだが、今は受けたい人がいつでもどんどん受けられる仕組みになっている。

 海外におけるPRでは、「外国人材雇用促進のためのジョブフェア&マッチングイベント」がある。日本の宿泊業、特に旅館に関しては、ホテルとの違いやどんな特徴があるのかなど、まだ知らない人が多い。そのPRをわれわれが実際に現地に行って行うことと、旅館で活躍している外国人材の事例を紹介することで、日本の宿泊業で働くことのイメージが湧くようにした。プロメトリック方式に改定して、試験の回数がどんどん増えていることもアピールした。

 現地の学生とわれわれ旅館のメンバーとのマッチングも行い、良い人材がいればその場で採用を決めてもらっている。

 

 ――ジョブフェア&マッチングイベントは7月のインドネシアを皮切りに、インド、ネパール、スリランカの各国で実施。現地の反応、雰囲気はどうか。

 昨年もインドネシア、フィリピン、インド、ネパールの4カ国で行ったのだが、その時は「日本が選ばれなくなっている」という話をたくさん聞いた。例えばインドネシアはオーストラリアの方が距離的に近い上に賃金が高い。UAE(アラブ首長国連邦)やヨーロッパにも人材がどんどん流れている。そのような話を聞いて、日本の宿泊業で働くことの強みをわれわれが見いださなければ他国との競争で勝てないと危機感を持った。

 今回、日本の宿泊業で働くことの意義や得られるスキルについて、しっかりとアピールできたのではないか。マッチングでも旅館と学生が雇用に関する具体的な話をするなど、有意義な話し合いができたと考えている。

 

 ――特定技能試験を受けるためのテキスト作成も担当した。

 他の業界がしっかりと準備をしている中で、必要性を感じて新たに作成した。

外国人材の送り出し機関の方は、テキストがないため実際に受験した人の話を聞いたりして独自に教育ツールを作っていたと思う。それが不要になった。

 試験問題もTPOによって正解が変わるような問題が入っており、新たな問題に沿ったテキストを今回われわれが作成した。6月に特定技能1 号向け、7月に2号向け、8月に専門用語集を完成させ、全旅連のホームページにもアップしている。今は日本語版だが、多言語化して、まずは英語版の作成を準備している。

 

 ――かなりの時間を費やしたと思う。

 こちらの方と、本業の旅館経営の方でピークの時は8対2ぐらい(笑い)。昼間に自館の仕事をして、夜に作成メンバーとオンラインで仕事をすることが毎日、という時期もあった。

 試験問題については、特定技能1号は学科が30問と実技が6問の計36問。旅館・ホテルで働く場合に必要不可欠な知識やスキルを幅広く洗い出してテキストに落とし込む作業が大変だった。

 

 ――受験者数はどれだけ増えているか。

 特定技能1号試験の国内外での受験者数は、2023年度(23年4月~24年3月)に2430人。プロメトリックを実装した今年度は9月までの半年間で5380人。受験者数が大幅に増えている。

 5380人のうち、4280人が合格。このうち何かしらの形で企業とマッチングが成立したのが1170人となっている。

観光庁が実施し、全旅連が事務局を受託している海外での「外国人材雇用促進のためのジョブフェア&マッチングイベント」の様子(上=インドネシア・ジャカルタ、下=インド・デリー)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒