前号の予告通り、「花椒(ホアジャオ)」について深掘り。花椒とは、日本の山椒(さんしょう)とは同属異種の、中国原産「華北山椒」の果皮を干したスパイス。中国山椒とも呼ばれ、山椒の兄弟分のような存在だ。
突然だが、「マー活」ってご存じだろうか? この「マー」の正体こそ、「花椒」だ。マーとは「麻辣(マーラー)」の麻の事で、花椒の舌がしびれるような辛さを意味し、辣は唐辛子のヒリヒリする辛さを意味する。マー活とはつまり、「シビ辛」や「シビレ系」ともいわれる麻味タップリの料理を楽しむこと。ブームで花椒の名が一躍有名になり、需要も拡大した。
ところで、紛らわしいのが「花椒」と「花山椒」の違いだ。先日、とある豚まん専門店で「山椒豚まん」なるモノを購入した。一口頬張ると、ふんわりと花椒が香り、かといってメチャクチャ辛いワケではなく、程よいあんばいで超美味。期間限定販売だったので、いつまでか店のHPを調べたが記載がなく、電話をしてみた。
ホントはもう一つ、確認したいことが。HPの商品コメントに、「花山椒香る」とあったのだ。花山椒とは本来、日本原産の山椒の花を指すということは本稿「その1」で述べたが、豚まんに入っていたのは花なのか、それとも花椒なのか?
筆者の推測通り、豚まんに使われていたのは花椒だった。あれだけ絶妙な味を生み出せるプロでさえ混同してしまう、花山椒と花椒。まぁ、おいしいんだからどっちでもいいや、という気もするが、それぞれの生産者にもプライドがある。やっぱりちゃんと別物だと認識したいものだ。
他にも分かりにくいのが、赤花椒と青花椒があること。花椒は、実が熟すと赤い花が咲いているように見えることからその名が付いたとされる。それをわざわざ青いうちに摘んで粉にした物が青花椒だと誤解されているようだが、実は華北山椒とは異なる藤椒という植物で、和名でいう冬山椒の亜種だそう。青山椒とも呼ばれ、和山椒の青い実も青山椒と呼ぶことがあるから、超ややこしい。
難しいことはさておき、以前大連の食堂で、卓上に置かれていた花椒油のウマさにノックアウトされて以来、花椒好きに拍車がかかった筆者。今回青花椒の正体を突き止めるべく調べまくっていたら、どうしても欲しくなって、ついポチってしまったモノが。
四川省南部涼山イ族自治州金陽県で栽培された、青花椒だ。標高が高いため、日差しが強く日照時間も長いから、機械でなく天日干しで、たった1日で乾燥するそうだ。だから香りがフレッシュなのだという。確かに、かんきつ系の爽やかな香りと、その後に押し寄せるシビ辛がたまらない♪
たくさん実を付けるので、中国では古くから子孫繁栄の象徴とされてきた花椒、英語ではSichuan(四川) pepperという。ニッポンが誇る和のスパイス山椒はJapanese pepperだ。共に香辛料だけでなく、生薬としても使われる優れモノ。最新の研究では減塩にも効果的だといわれる。やっぱり、山椒ってエライ!。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。