【口福のおすそわけ 468】豆腐百珍~プロローグ~ 竹内美樹


 こう蒸し暑いと、冷たい食べ物が欲しくなる。左党の筆者、まず思い付くのは、かき氷より冷奴だ。冷やしたお豆腐に薬味をのせ、おしょうゆをかけていただく。薬味はいろいろあるとうれしい。外せないのはおろしショウガ。大好物のミョウガのみじん切りや、青シソの千切りなんかもいいなぁ。ネギなら青ネギの小口切り。貝割れ大根を刻んでのせてもいいし、刻んだ香菜をのせてナンプラーで食べるのもアリだ。

 ちなみに、ナゼ四角く切ったお豆腐を冷やした物を、冷奴と呼ぶのか?実は、江戸時代の大名行列では、やりを掲げた「槍(やり)持奴」が先頭を歩くのが習わしだった。彼らが着ていたはんてんには、大きな四角い「釘抜紋」がついていたため、紋の形同様四角く切った豆腐を「奴豆腐」と呼ぶようになったという。冷やした物が冷奴で、湯豆腐は湯奴ともいう。

 話を戻そう。湯豆腐だと、食べ方もビミョーに違う。温かいお豆腐をフーフーしながら食べるときのお供は、カツオ節の糸削りだ。黄ゆずの皮なんかもあるとなお良い。湯気の立ったお豆腐にのせれば、うっとりするような香りが立ち昇る。ゆずこしょうでもOK。タレは京風のちょっぴり甘めなだししょうゆでも、ポン酢でも。

 わが家は断然絹ごし豆腐派だが、豆の味が強いのは木綿豆腐だ。豆腐を作る工程の途中でできる、おぼろ豆腐も好き♪ 豆乳ににがりを入れ、攪拌(かくはん)して凝固させる工程を「寄せ」と言い、その段階で、完全に固まる前にくみ上げるため、「寄せ豆腐」とも「汲(く)み上げ豆腐」とも呼ばれる。「おぼろ豆腐」の名称は、固まっていない豆腐と豆乳の境目が分かりにくく、その様子がおぼろげだからとか。

 ある程度固まった物を崩しながら均一に型箱に入れ、重しをかけて圧搾したのが木綿豆腐で、濃い豆乳を使い、「寄せ」の後そのまま固めたのが絹ごし豆腐。どちらも最後は水にさらし、余分なアクを取り除く。おぼろ豆腐は圧搾もさらしもしないので、トロリとクリーミーな食感で、大豆本来の味が楽しめるから、筆者はお塩だけでいただく。夏も冬もそれぞれ楽しめて、厚揚げや油揚げ、高野豆腐にもなっちゃうんだから、豆腐ってスゴイ! 豆腐を使ったお料理も含めたら、バリエは無限大!

 わが家でよく登場する豆腐料理といえば、まずは妹がよく作ってくれる豆腐ハンバーグ。それから中華の麻婆(マーボー)豆腐に韓国料理の純豆腐チゲ。たまにゆるめのカニ玉入りのあんかけ豆腐みたいなのも作る。他に思い付く豆腐料理というと、白和え、肉豆腐、飛竜頭(がんもどき)、豆腐田楽、少し前にハマった豆腐干絲(カンス)(干し豆腐)の和え物、あとはみそ汁の具の鉄板だし、祖母は白いご飯に冷奴をのせ、おしょうゆをかけて食べるのが好きだった。

 さて、そんな豆腐料理の料理本が、なんと江戸時代に出版されていた。天明2(1782)年刊の大ベストセラー「豆腐百珍」だ。百珍というだけあって、豆腐料理のみを百種類掲載。一体どんな料理なのか? 続きは次号で! お楽しみに♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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