【口福のおすそわけ 488】茨城のレンコン 竹内美樹


 先日、ボスからお土産をいただいた。超ビッグサイズのレンコンだ。大きいとは聞いていたが、想像を絶するサイズ感にビックリ! しかも、四節(よんふし)もつながっている。スーパーで見かけるのは、大抵一~二節だ。こんな立派なレンコン、一体どこで売っているんだろう? 実は、茨城県のゴルフ場からの帰り道、「JA水郷つくば」管内の農産物直売所に立ち寄ったという。この「水郷(すいごう)」という言葉、あまり聞き慣れないが、水辺の里という一般的な意味のほかに、特に利根川下流と霞ヶ浦を中心とする湖沼地帯を指すこともあるとか。霞ヶ浦は、琵琶湖に次ぐ日本で2番目に大きな湖。その周辺地域の特産物こそ、レンコンなのだ。

 日本一の生産量を誇るこの地域、古くは稲作を行っていたそうだが低湿地帯だったため水害が多く昭和初期ごろまでは3年に1度米が採れれば良い方だといわれていたという。農作業には田舟(たぶね)が必要で、田植えも腰まで水に漬かるほど水位があったようだ。逆にそんな湿田での栽培に向いているレンコンの作付面積が昭和40年代から急増。ポンプの水圧による水掘りが導入され、さらに収穫量が増えたといわれる。

 レンコンの収穫作業はテレビで見たことがある。ポンプの水圧でレンコンの周りの泥を飛ばし、手で掘り下げるのだ。水圧がかなり強くレンコンに直接当たると傷が付いてしまうため、思いのほか繊細な作業らしい。穴が開いているから「先を見通せる」という縁起物として、おせち料理に使うこともあって最も出荷量が多いのが12月。寒い冬、水に漬かっての作業は厳しいだろうと、想像に難くない。ちなみに、レンコンの穴の役割は酸素が少ない泥の中で呼吸をするための、通気口のようなモノなんだそう。

 レンコン出荷量全国1位の茨城県、全国シェアは5割以上に上る。そのほとんどが霞ヶ浦周辺で生産されているというだけあって、農産物直売所が面している国道354号線の両脇には辺り一面に蓮田(はすだ)が広がっているそうだ。ハスの花が開花する7~8月には、美しい風景が見られるという。

 本来の旬は冬だが、通年流通しているのは、ハウス栽培が実現したから。6月ごろハウス物が出始め、露地物が翌5月まで出荷される。夏の暑い時期は、段ボールでなく発泡スチロール箱に氷を詰めて出荷し、鮮度を保っているそうだ。

 さて、いただいたレンコン、あんまり大きかったので計測してみた。一節の長さが約15センチ、重さ555グラム、輪切りにした場合の直径は9センチ以上もあった。参考までに普通サイズを調べたところ、長さ10センチ程度、重さ180から200グラム、直径は6センチ程度だそう。スゴイ差だ!

 乱切りにしてバターしょうゆで炒め煮にするのが筆者の定番。超ホクホクで、レンコン自体にうまみや甘みがあり、濃厚な味わい。昨年1月にご紹介した千葉県鴨川のサラダレンコンとは全く違い、それぞれに美味。

 今夜はてんぷらにしようか? それとも王道のレンコンきんぴら? ひき肉の挟み焼きもいいな♪ 口福な夜が続く。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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