【口福のおすそわけ 489】霞ヶ浦のシラウオ 竹内美樹


 前回、茨城県霞ヶ浦周辺特産のレンコンについて書かせていただいたが、ボスからのお土産、実はもう一つあった。霞ヶ浦で取れたシラウオだ。この琵琶湖に次ぐ日本で2番目に大きな湖では、漁業も盛ん。一般的に川エビと呼ばれるテナガエビは全国シェア50%超えの漁獲量を誇り、シラウオの漁獲量も堂々の全国第2位にランクイン!

 さて、このシラウオ、シラスやシロウオとどう違うのか? 中でも一番ポピュラーなシラスは、ご存じの通りイワシ類の稚魚。成長したイワシとは全く別の姿だが、シラウオもシロウオも、成魚は体が透明な、稚魚のような状態のまま。

 シロウオは漢字で素魚と書き、スズキ目ハゼ科の魚。福岡市室見川下流で江戸時代から行われているという、シロウオの簗(やな)漁が有名だ。そういえば、福岡で「シロウオの踊り食い」を食したことがある。水を張った丼の中を泳ぐシロウオを小さな網ですくうのだが、コレがなかなか難しい。かわいそうだとは思ったが、地元の伝統料理と紹介されたら、食さねば女が廃ると、エイッ!と口に放り込んだ。寿命は1年、せっかくならおいしくいただかねば。

 話を戻そう。シラウオは漢字で白魚と書き、キュウリウオ目シラウオ科の魚。かつてはサケ目シラウオ科に分類されていたそうだが、近年独立目とされたようだ。シロウオが海で育ち川を遡上(そじょう)するのに対し、霞ヶ浦のシラウオは淡水魚として一生を過ごす。

 霞ヶ浦でシラウオのトロール漁が解禁になる7月下旬は、まだ若くて体長5センチほど。漁が終わる12月末には10センチくらいに成長するそうで、それぞれ風味も異なるらしい。取れたてのシラウオは透明でキラキラ輝くので、「霞ヶ浦のダイヤモンド」と呼ばれるそう。

 最も甘みが増す12月のシラウオは「寒曳(かんび)きシラウオ」といって珍重されるが、資源保全のため定められた漁獲可能時間の午前2時半~6時半ごろは、湖上も暗く寒いため、厳しい作業となる。さらに、網を上げたら鮮度を保つためにすぐ氷を入れるそうだ。そして、港に戻ると今度は白魚を氷水の入った大きな容器に投入し、「ザップがけ」という、他の魚やエビとの選別を手作業で行うそうだ。もはや、冷たいだなんて言っていられないだろう。

 そうした漁師さんたちの苦労の末、消費者に届くシラウオ。どんな調理法で食べようか? やっぱり、天ぷらにしよう! 水で洗って、ペーパータオルでサッと拭き、軽く打ち粉をしたら、天ぷら衣にくぐらせ、できるだけ1匹ずつ揚げる。かき揚げにしてしまうレシピもあるが、冬のふっくらとしたシラウオは、1匹ずつしっかりと味わいたい。

 レモンをキュッと絞ってお塩で食せば、そのふんわり食感に感動する。ウナギの骨さえ除ける母も気にしないくらい、骨もやわらかい。甘味の中にほんのり苦味もあって、大人の味。間違いなくお酒が進んじゃう♪

 小さくても、その一つ一つの食材の尊さを、改めて感じた口福な夜であった。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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