【口福のおすそわけ 520】ラタトゥイユ♪ 竹内美樹


 毎日こう暑いと、食欲も減退するし、ましてや料理なんて作りたくもない。レンチン料理で乗り切ろうか?とも思うが、1~2人前ならともかく、5~6人前となると、レンジアップだけではややキビシイ。

 そんな時意外と助かるのが、煮込み料理だ。え?暑いのに煮込みなんて…と思われるだろうが、ほったらかしておいても鍋が作ってくれるから、鍋にへばりついていなくてもOK。炒め物は短時間で済むが、炒めている間ずっと鍋を振り、火の前に立っている必要がある。だから、キッチンに立つのがおっくうになりがちな暑い日こそ、煮込み料理がおススメなのだ。

 熱々の煮込み料理を食べると汗だくになりそうだが、それもかえって良いらしい。汗と共に老廃物が排出されスッキリする上、新陳代謝も高まるという。さらに、汗が蒸発する際、体表の熱が放散され、体温の上がり過ぎを防ぐのだそう。

 筆者が好んで作るのは「ラタトゥイユ」。仏南部プロヴァンス地方、ニースの郷土料理で、夏野菜の煮込みだ。筆者の作り方はとっても簡単。オリーブオイルで鷹の爪とみじん切りのニンニクを炒め、玉ネギ、ナス、パプリカ、ズッキーニなどを投入。全体に油がなじんだら、トマト缶とブイヨンキューブを入れ、ふたをして弱火で煮込むだけ。

 あればブーケガルニなどハーブも入れる。香辛料メーカーの小袋入りの物が便利。本来のレシピにはないのだが、玉ネギを入れるあたりで砂糖を少し入れておくと、コクが出て美味。野菜を切るのも面倒!って時は、業務スーパーの冷凍野菜をブチ込むという荒ワザも。ズッキーニもパプリカもスライス+湯通し済みで、ナスは乱切りを揚げてあるから、火の通りも早い。揚げナスを使うと、ラタトゥイユじゃなくてカポナータになっちゃうけど…って、その違いは?

 カポナータとは、イタリア・シチリア島発祥の夏野菜の煮込み。じゃあ、発祥地が違うだけでラタトゥイユと同じじゃん、と言われそうだが、二つの大きな違いが。一つは、カポナータは野菜をいったん揚げてから煮込む点。もう一つは、カポナータはワインビネガーと砂糖を使い、甘酸っぱい味付けにする点だ。

 温かいままでも、キンキンに冷やしても、どっちもイケるラタトゥイユ、作り置きにも便利。パスタソースにもなるし、スライスしたバゲットに載せれば、シャレたツマミに早替わり。

 ラタトゥイユの語源は諸説あるが、「rata」(ごった煮)と「touiller」(かき混ぜる)というのが有力だそう。また、「rat」はネズミにも由来しており、仏語辞典を引くと、俗にネズミの餌のようなまずい料理という意味もあるらしい。アカデミー賞受賞アニメ「レミーのおいしいレストラン」の原題が「Ratatouille」で、主人公がネズミなのも興味深い。そのハッピーエンドへの転機となった料理こそ、ラタトゥイユだった。

 幸せを運ぶラタトゥイユ、実は今、冷蔵庫で冷えている。白ワインで乾杯♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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