11月15日って、七五三だよね?と思っていたら、それだけじゃなかった。ナゼこの日に七五三を祝うようになったかは諸説あるが、江戸幕府5代将軍徳川綱吉の長男徳川徳松の髪置祝いが行われた日だったからとする説が有力。そして、着物姿で神社にお参りに行く子供連れが多いことから、「きものの日」に制定されているそうだ。
そして日本昆布協会では、11月15日を「こんぶの日」と定めているという。栄養豊富な昆布を食べて元気に育ってほしいという願いと、昆布を食べる習慣を付けてほしいという願いが込められているのだそう。
国産昆布の9割以上が北海道産。函館沿岸で採れる真昆布、羅臼沿岸の羅臼昆布(別称オニコンブ)、利尻・礼文・稚内沿岸の利尻昆布、日高沿岸の日高昆布(別称三石(みついし)昆布)等が代表的。昆布の一大産地として君臨する北海道だが、実は消費量では令和4年のデータで37位と意外にも下位だ。1位は福井県。どうして?と思うが、そのヒミツは江戸時代にさかのぼる。
北海道と上方を往復しながら物資を売買する「北前船」が、明治時代半ば頃まで隆盛を誇った。そのルートは当初、海路で敦賀・小浜を経て、琵琶湖を渡って関西に至るものだったため、福井県はその中継地点として古くから蝦夷の昆布に親しんでいたのだ。
一方、薩摩藩が琉球王国を通じて清と交易を始め、昆布も密輸出されていたそうだ。富山の薬売りを通じて蝦夷から昆布を取り寄せ、琉球王国に運ばせたらしい。そして清に昆布を運び、麝香(ジャコウ)などの貴重な漢方薬原料を持ち帰ったとされる。だから昆布の採れない沖縄に「クーブイリチー」という昆布を使った郷土料理があるのだ。もちろん富山も昆布消費量が全国第3位と多い。おにぎりに巻くのものりでなく、おぼろ昆布やとろろ昆布だ。この、北海道から北陸を経て九州、そして沖縄、さらには中国にまでおよんだ昆布流通経路は、別名「昆布ロード」とも呼ばれている。
さて、その昆布だしからうまみの正体グルタミン酸が発見されたのはあまりにも有名だが、人が生まれて初めて口にする母乳にも、豊富に含まれているのだとか。だから、ホッとする味と感じるのだろう。昆布の表面に付いている白い粉は、まさにそのうまみ成分である「マンニット」。だから、水洗いせず表面を硬く絞ったぬれ布巾で拭くのが正解だそう。
残念ながら、温暖化で昆布の生産量は激減。天然物と養殖物があるが、天然の真昆布はほぼ流通していないといわれる。食文化の変化で、昆布でだしを引く人も減った。時短簡単というイマドキの流行とは逆行しているかもしれない。
だが昆布は、糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロールをたまりにくくし、免疫力アップも期待できる「フコイダン」等健康に役立つ成分も豊富。Umamiや和食が世界から注目されている今、その素晴らしさを、われわれ日本人が後世に伝えていかねば!と強く思う。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。