【口福のおすそわけ 532】チュクミ 竹内美樹


 先日、女子会に参加した。「サムギョプサル」を食べに行こう!と某店へ。3人のうち1人が、「チュクミ」を食べてみたいと言い出したのだが、どちらも2人前~となっているため、二つ注文したら食べ切れないだろうと、両者が楽しめる「鉄板チュサムギョプ」をオーダー。生のワタリガニをしょうゆダレに漬け熟成させた「カンジャンケジャン」も注文した。大好物だ。

 まずテーブルに備え付けのコンロに火が点けられ、大きな丸い鉄板に載ったチュサムギョプが登場。外周に豚の三枚肉が並び、内側はもやしや長ネギなどテンコ盛りの野菜の上に、真っ赤な特製ソースをまとったチュクミとおぼしきモノが載っている。

 さて、そのチュクミとは韓国語でイイダコのことで、本来炒めるという意味の「ポックム」と合わせ「チュクミポックム」というのが正式な料理名だが、今や「チュクミ」といえばこの料理。生のイイダコとさまざまな野菜を、コチュジャンベースのソースで炒め煮にしたもので、実は現在大ブームなんだとか。2020年に本場韓国からチュクミ専門店が初上陸すると、新店舗が続々オープン、既存の韓国料理店でも提供を始める店が増えたという。韓流ドラマの影響らしい。

 話を戻そう。山盛りの野菜の上に載ったチュクミに火が通るハズがない。どうするのかな?と思っていると、「こちらでやります」とスタッフが来てくれた。真っ赤なソースの中からチュクミを引っ張り出すと、予想以上に大きい! イイダコってこんなに大きかったっけ?とビックリ。そのチュクミの頭と足をハサミでジョキジョキ切り離し、足をさらに切り分けたところで、「もう少々お待ち下さい」とひと言。うぅ~ん、待ち切れないほどおいしそうな香りがしてきた。そのうちケジャンが運ばれ、ビニール手袋をグチョグチョにしながらカニの身をチュパチュパすすっているうちに、「そろそろ大丈夫です!」と。

 思いのほか、辛い! 勝手にヤンニョムチキン的なマイルドな甘辛みそ風味を思い描いていたが、それこそ甘かった…。唐辛子の辛さをマイルドにしてくれる、甘い韓国焼酎チャミスルが進むのなんの!

 本来締めに「アル(卵)」+「マニ(たくさん)」でアルマニと呼ばれるとびこの炒飯を食すべきだが、そこまでたどり着けず。本場ではチュクミに生きたイイダコを使うこともあるそうだ。タコの踊り食い「サンナクチ」が名物料理の韓国なら、さもありなん。現地で食べた時は、ぶつ切りにされたタコの足が皿の上で動き回り、口の中に吸盤が貼り付いてビックリしたものだ。ちなみにサンナクチには、イイダコでなく手長ダコが使われることが多い。

 ビタミンB12の含有量が豊富なイイダコ。造血作用で貧血予防になり、眼精疲労や肩こり、神経痛などの改善も期待できるという。低カロリー高タンパクのチュクミ、野菜もたくさん食べられてうれしい。きっと明日はもっと元気だぞぉ♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。


(観光経済新聞11月25日号掲載コラム)

 
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