【口福のおすそわけ 535】町中華でガチ中華! 竹内美樹


 行きつけの町中華がある。東京都現代美術館近くの「餃子太郎」だ。店名からすると、あまりガチ中華という雰囲気ではないのに、店を切り盛りする女性は片言の日本語で、厨房にオーダーを通す時は中国語だ。当たりかも?という予想通り、ニラレバ炒めが超ウマイ! エビと玉子炒めも、絶妙な塩加減が最高♪

 ここでチョットおさらい。以前書かせていただいたが、「ガチ中華」とは日本人向けにアレンジしていないガチな中国料理を提供する、中国人の中国人による中国人のための飲食店。対する「町中華」は、地域密着型で、日本式中華料理を提供する大衆食堂。その定義は曖昧だが、特徴としては、ボリューム満点の半チャンラーメンなど、千円以下の定食が充実している。

 2014年に発足した「町中華探検隊」がブームの火付け役といわれる。マスコミでも取り上げられる人気のヒミツは、個人経営ならではの個性的な魅力があるからだろう。その意味で同店はズバリ町中華だが、中国人経営でメニューに「豚耳和え」があるところなんてガチ中華っぽい。近年中国人経営で、セットメニューが多い「大陸系中華」という新たなジャンルが注目されていて、同店はコレにも近い。ちなみに中国料理店は本場の味を提供する店、中華料理店は中国にないエビチリや天津飯など日本式中華を提供する店というカテゴライズも。

 難しいことはさておき、特筆すべきはメニューが豊富で、懐に優しい価格設定。オーダーバイキングの「食べ飲み放題」は、2時間1人税込み3580円! 飲み物はビールや酎ハイ・日本酒・紹興酒・ワインまであり、料理はピータンやバンバンジーなどの前菜や、一品料理、麺類・ご飯類・スープ・点心など何と98種類! そのメニューを眺めていたら、いつもわれわれが注文する「エビギョーザ」や「ジャガイモの細切り和え」が入っていない。つまり、メニューは軽く100種を超えるのだ!

 冒頭で登場した中国人女性、とても明るくほがらかだ。先日お邪魔した時は、日本語が堪能な高校生の息子さんがいらしたので、いろいろとお話を伺うことができた。女性の名は李亜軍(リアクン)さん。瀋陽(シンヨウ)ご出身だそうで、厨房を守るご主人と店を始めて12年ほどになるという。店名は居抜きの店舗だったからで、ナゼ中華料理店を開いたのかという問いに、「日本に来てこれしかできなかったから」と話してくださった。学生だったお嬢さんは就職され、今は土日だけ手伝ってくれるそうだ。家族4人で支え合い、いつも笑顔が絶えない。
 筆者のイチオシは「エビギョーザ」。平らな円形で、中にプリプリのエビが1尾丸ごと入っている。「干し豆腐の和え物」も美味。豆腐干絲(トウフカンスー)の冷菜は、あれば必ず注文する大好物だが、同店でもメニューにあってうれしい♪ ご子息いわく、一番人気は若鶏の唐揚げ。次は絶対食べてみようっと!

 おいしいだけじゃなく、李さんから元気をもらえて、お腹も心もチャージできる。また行かなくちゃ♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。


(観光経済新聞2024年12月16日号掲載コラム)

 
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