赤VS白といっても、「紅白歌合戦」ではない。食べ物の話だ。ワイン好きの筆者、夕食前に悩むのは、赤か白か?の選択肢。モチロン、食べ物次第ではあるが、逆もまたしかりで、今日はこっちを飲みたいからコレを食べよう!ということも。妹もよく「今日は赤ワインの気分」と言って、帰りがけに近所のワインショップで赤ワインとチーズを買ってきたりする。
フレンチの場合、ワインから派生するのが、赤と白のソース。カッコつけて言うと、ソース・ヴァン・ルージュとソース・ヴァン・ブラン。赤ワインソースの方は、ちゃんと作るならエシャロットを刻むところから始まるが、そんなのはスッ飛ばして、赤ワインとみりんとしょうゆ、バターを煮詰めたら出来上がり♪ ハンバーグでも、このソースの魔法で、家庭料理からお店っぽい料理に早替わり。
白いソースは、白ワインを煮詰めて作るヴァン・ブランよりも、白いバターソース、ブール・ブランの方が作る機会は多い。ナゼなら、ヴァン・ブランの方は材料にフュメ・ド・ポワソンや生クリームが必要だから。最近やたらと高い生クリーム、必ずしも常備しているワケじゃないが、ブール・ブランは玉ネギと白ワインとお酢とバターがあれば作れちゃうから、ハードルが低いのだ。作り方も簡単。玉ネギのみじん切りと白ワイン、お酢を汁気がなくなるまで煮詰め、バターを数回に分けて入れ、分離しないように泡立て器でよく混ぜ、乳化したら出来上がり♪ 白身魚をソテーしただけでも、コレさえあればシェフの一皿に。
煮込み料理にも、赤と白がある。赤の代表選手は、鶏肉を赤ワインで煮込んだ「コック・オー・ヴァン」と、牛肉版の「ブッフ・ブルギニヨン」だろう。どちらも放っておけば鍋が作ってくれるので、超楽チン。
白い煮込み料理の定番は、「フリカッセ・ド・プーレ」と「ブランケット・ド・プーレ」。前者は鶏肉の表面を焼いて、しっかり肉のうまみを閉じ込めてから煮込む調理法で、肉が主役。後者は「ブランシール」といって、表面が白くなる程度の湯通しだけで煮込むため、肉のうまみが溶け出したスープが主役。小麦粉とバターのルウを入れるため、日本のホワイトシチューに近い感覚の料理だ。
地域ごとに、さまざまな煮込み料理があるフランス。南仏マルセイユの赤いブイヤベースに対し、白いブイヤベースと呼ばれるのが、やはり地中海に面した港町セートの郷土料理「ブーリッド」だ。ニンニクマヨネーズ「アイオリソース」でコクととろみを出した、魚介類の煮込みスープ。北のブルターニュ地方の郷土料理「コトリヤード」も、同じく白いブイヤベースと呼ばれるが、コチラは魚介類の煮込みを生クリームで仕上げる。スープを吸ったジャガイモが決め手。
とりあえず今回はワインつながりで、フレンチ限定で紅白を掘り下げてみた。気になる料理はあっただろうか? お正月料理に飽きたら、ぜひお試しあれ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
(観光経済新聞1月6日号掲載コラム)