【口福のおすそわけ 540】秘密の農場レストラン~その1~ 竹内美樹


 先日「会員制・住所非公開」というレストランにご招待いただいた。「WATF secret farm」というそのお店、自社農場で育てた野菜がメインと聞いていたが、想像をはるかに超える内容にビックリ! 野菜自体のクオリティの高さはモチロンのこと、野菜それぞれに合った調理法で提供されるお料理のおいしさは格別♪

 シェフ自らお料理をサーブして下さるのだが、そのつどどんな野菜でどんな特徴があるのかなど説明していただけるから、より一層おいしさが増す。全野菜自分たちで作っていますとおっしゃったシェフの古森啓介(ふるもりけいすけ)氏、実は都内に6店舗を構える、次世代型オーガニックレストラン「WE ARE THE FARM」を運営する株式会社ALL FARMの代表取締役でもある。なるほど、WATFは店名の頭文字だったのだ。

 「WE ARE THE FARM」の公式サイトには、「自分たちの手で畑を耕し、無農薬・無化学肥料・露地栽培にこだわって、手塩にかけて育てた『固定種』野菜を主役に、素材の味を最大限に引き出すシンプルな調理法で最高の一皿をご提供するのがわたしたちのスタイル」とコンセプトが掲げられている。

 2013年、千葉県佐倉市に畑を借りて自社農園「在来農場」をスタートさせ、14年に東京で開業した同店。その進化形「非公開会員制レストラン」がWATFなのだ。

 前置きが長くなったが、このプライベートでラグジュアリーな空間でいただいた野菜料理の数々をご紹介しよう。まずはケールのサラダ。「KALE FARM」というケールのコールドプレスジュースのブランドを展開する、同社の顔とも言える野菜だ。古森氏によると、ケールは10種類もあり、生食に適したタイプや青汁に適したタイプなどさまざまあるそう。冬の寒さで肉厚になっている今、炭火でサッと焼いたケールの歯応えを楽しんでもらいたいとのこと。シンプルな味付けを施されたケールは確かにかみ応えがある。だが想像していたよりずっと苦味がなく、むしろ甘味さえ感じる。かめばかむほどうまみも出てくる。

 続いて、白菜のサラダ。半分に割った状態を見せていただいたが、ギッシリ葉が詰まっていた。松島純二号という固定種だ。オーガニックで白菜を作れるようになるまで、7年もかかったそうだ。伝統の仙台白菜の中心部分だけをぜいたくに使ったサラダは、みずみずしくてシャキシャキ♪

 ここでちょっと、「固定種」について。固定種とは、毎年出来の良いモノの種を採ることを繰り返してきた性質を固定した野菜のこと。野菜本来の個性が強く、味が濃くて美味だが成長速度もサイズもバラバラだ。そこで登場したのが「F1種」と呼ばれる交配種。育てやすく、効率良く大量生産ができるように、規格に沿って改良された一代限りの品種である。現在流通している野菜の多くがこのF1種だという。
 当日の朝採ったばかりの野菜たち。3品目は衝撃の菊芋! 一体どんなお料理なのか? 続きは次号で♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。


(2025年2月10日号掲載コラム)

 
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