
非公開会員制レストラン「WATF secret farm」のディナーの続き。同店を運営するALL FARM社では「KALE FARM」という、ケールのコールドプレスジュースのブランドも展開していると前述したが、作り方がスゴイ! 無農薬無化学肥料で育てたケールを、鮮度保持のため真夜中に収穫、近くの加工所で搾りたてを冷凍しているのだ。自社農場が台風の被害に遭い、他の野菜が壊滅状態だった時も、ケールだけは成長を続けていたという。栄養素が豊富な上、生命力が強いのだ。同店にはそのジュースを使ったケールビールやケールハイボールも。ひと口いただいたが、苦味ゼロ、罪悪感もゼロ!
さて、お料理の続き。6品目は、土垂(どだれ)という品種の里芋の素揚げ。「一物(いちぶつ)全体」をコンセプトに掲げる同社、素揚げはモチロン皮ごとだ。シェフが調合したというスパイスがかかった里芋は絶品! 里芋の皮ってこんなにおいしかったんだ♪と、目からウロコ。根菜類は群馬県安中市の自社農場で栽培しているそう。丸ごと食せるのも、安心安全な野菜だからだ。
7品目は、先ほど芯の部分をサラダでいただいた白菜、松島純二号の葉の部分を、牛肉と共に火鍋で。ナルコユリやエゾウコギなど、50種類もの漢方の生薬を紹興酒にしみ出させて作られたスープで、トロトロに煮込まれた白菜は、体も心も温めてくれる。
8品目は、青梗菜のオイスターソース炒め。手作りのオイスターソースが超美味! 単純に見えてこだわりの詰まった逸品だ。
そして、ヤーコンのチップス。皮ごと薄くスライスして素揚げにしてあり、ほんのり甘い。サツマイモに似た塊根(かいこん)だが、ほとんどデンプンを含んでいない。フラクトオリゴ糖の含有量が豊富で、消化酵素で分解されずに腸まで届くので食後血糖値の上昇が抑えられ、腸内のビフィズス菌を増やしてくれるうれしい食材。
10品目は大浦ごぼう。大きな物で太さ約30センチ、長さ1~1.5メートルに及ぶらしい。掘るのに30分もかかるそうだ。千葉県匝瑳市(そうさし)の大浦地区で、6農家だけが栽培している品種で、成田山新勝寺に奉納されている。軟らかくなるまで炊いてから炭火で焼いた物だったが、滋味あふれるとはまさにコレ!という味わい。
締めは、麻婆豆腐ならぬ麻婆かぶオンザライス。豆腐の代わりに鎮座していたのは、固定種の「みやま小かぶ」。栽培がとても難しいそうだ。伝統小かぶの最高峰と言われているという。トロットロに火が入った小かぶは、見事に豆腐の役割を果たしていた。
デザートは、ビーツとイチゴのあまおうで作ったアイス。クリーミーなのに、乳製品は一切使っていないというからオドロキ!
感動するほどおいしい野菜たちは、シェフ兼社長古森啓介(ふるもりけいすけ)氏の「無農薬無化学肥料、固定種の露地栽培」というこだわりの賜物。6店舗ある同社のレストラン「WE ARE THE FARM」でも、同じ野菜たちが食べられる。行かなくちゃ♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。