
世界各国に「ロシア風サラダ」の名でマヨネーズ入りポテトサラダが存在するが、ほとんどジャガイモは角切り。ジャガイモを潰したポテトサラダは、日本で独自に進化したモノだとか。そこには、コロッケとの関わりがあるようだ。
コロッケがいつどこから日本に伝わり、どのように広まったかについては諸説あり、筆者もいくつかの文献に当たってみたが、コレといった決定打はなかった。だが昭和初期ごろ、コロッケが精肉店の惣菜として人気を得たのは事実。
肉の端材を使い、余ったラードを揚げ油にして廉価で提供、庶民でも手の届く食べ物に。
そして、コロッケ用に潰したジャガイモと、ピクルス替わりの塩もみキュウリ、入手しやすくなったマヨネーズを使って日本風のポテトサラダが誕生したのではないかと言われる。
さて、そのマヨネーズ、日本での歴史は大正時代にさかのぼる。「キユーピー」の創始者中島董一郎(なかしまとういちろう)氏が、アメリカでポテトサラダに使われているマヨネーズに出会い、そのおいしさと栄養価の高さに感動して研究を重ね、日本で初めてマヨネーズを製造販売したそうで、今年3月ちょうど発売100周年を迎えた。
関東大震災後、復興の中で生活の洋風化が進んだのを機に発売されたが、当時はマヨネーズの名も知らない人が多く、整髪用のポマードと間違えられたという逸話も残る。
第2次世界大戦では、原材料が入手困難となり、製造中止に追い込まれた。だが、1948年に製造を再開、58年には自立式ポリボトル容器入りを発売、使い勝手が良くなり売り上げも急増。
その後、数社がマヨネーズ市場への参入を試みるが、いずれも失敗。そんな中、68年に「味の素」が、タイプの異なるマヨネーズを引っ提げて業界に登場した。キユーピーが卵黄のみを使うコクのあるタイプなのに対し、味の素は全卵と水あめを使い、あっさり系で酸味の少ないタイプ。味の素の参入で、市場全体が拡大したという。
ちなみに、家庭用はこの2社の寡占状態だが、業務用のシェアはケンコーマヨネーズがキユーピーに次ぐ2位にランクイン。
実は「ポテサラ」という略称も、ケンコーマヨネーズの登録商標なのだ! 同社には、生のじゃがいもから一貫生産ができるポテサラ専用工場もあり、製造工程で出たジャガイモの皮を液状化し、豚の飼料として出荷する、国内初の取り組みも行っているのだとか。
ところで、キユーピーマヨネーズは卵黄しか使わないなら、卵白とかどうするの? ご心配なく。卵白はお菓子やかまぼこに、卵殻はカルシウム強化食品や土壌改良剤・肥料に、卵殻膜は化粧品や食品の原料に利用されており、100%有効活用されているそうだ。
ジャガイモの潰し具合や具材など、ポテサラのバリエーションは無限大。マヨネーズを変えるだけでも、違う口福が味わえるハズ。いろいろ試してみたくなって、思わずネットでポチってしまった筆者であった。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
(観光経済新聞25年3月17日号掲載コラム)