【地域創生と観光ビジネス38】東京アドベンチャーライン「いいね! 鉄キャン」奥多摩の魅力発信 淑徳大学経営学部観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子


 「東京アドベンチャープロモーション協議会」と、筆者が所属する淑徳大学経営学部は、青梅市・奥多摩町の持続可能な観光振興に資することを目的に、今年、連携協力の覚書を交わした。

 東京アドベンチャープロモーション協議会とは、青梅、奥多摩の両駅間沿線地域の産業、観光の発展を目的に、20年7月に設立された協議会である。JR青梅駅とJR奥多摩駅間の愛称「東京アドベンチャーライン」に由来して命名された。

 ここが首都・東京とは信じがたい豊かな自然が広がるエリアで、JR中央線を利用して都心からのアクセスもよい。ここで注目しているのが、「いいね! #鉄キャン」である。手ぶらでBBQもよいが、車の運転があってアルコールが飲めない中高年、免許証はあっても車がない若年世代をターゲットに、鉄道でキャンプするムーブメントを喚起したキャンペーンだ。

 そこで秋晴れの9月、ゼミ生たちを引き連れて鉄キャンに挑戦。JR奥多摩駅に集合して、徒歩で「氷川国際ます釣場」を目指した。

 現地では、一般社団法人奥多摩観光協会ならびにJR東日本八王子支社地域共創部地域連携ユニット、株式会社USPの方々にお出迎えをいただいた。

 澄んだ空気のなか桟橋を渡ると、渓流の水音も清々しい釣り場が広がる。蛇行する日原川の両岸には緑がたちこめ、学生たちから思わず歓声が上がった。今回は、その一部を貸し切って、マス釣りを楽しんだ。

 生きた「さし虫」やイクラなど釣り餌の扱い方を教えてくれたのは、釣り具のDAIWAで知られるグローブライド広報室の田中泰幸さん。器用な手つきで針に餌をつけると、学生たちからどよめきが。おのおの勢いよく竿を投げ、糸を垂らしてしばらく待つと、確実に手当たりが。この、手当たり感がたまらずに、釣りにはまる人は少なくない。

 初心者でも楽しく豪快に、幾匹もマスを釣り上げることができ、手ぶらでフィッシングの楽しみを知ることができた学生たち。釣れたマスは、併設されたBBQ場に備え付けてあるハサミで内臓を処理して、そのあと長串に刺して塩をふり、炭焼きにした。

 魚のさばき方、見栄えのよい串の刺し方、塩のふり方等は、釣り場のスタッフが丁寧に教えてくれる。共同調理はチームワーク力が試される。炭に火をおこして野菜や肉を焼き、串を遠火であぶって、焼きそばで〆る。仲間同士、和気あいあいの時間を過ごした。

 これが見事にZ世代に刺さった模様。手間がかかる後片付けもなく、筆者以外の多くが普段着で臨んだ。(筆者は前日、アウトドア用品専門店に駆け込んで、「山ガールのようなウエアが欲しい」と伝え、頭からつま先まで全てそろえた。気合の入れすぎだった)。

 この日は夕立ちがあって架線の影響から帰りの電車が遅延。車内でじっと復旧を待った。こうしたアクシデントも旅のよい思い出に。調理をしなかったマスは、売店にあった氷を詰めて小型クーラーバッグで持ち帰った。日帰りだからこそ、できる技。自宅でもマス料理を楽しんだ。ハッシュタグによる情報発信のせいか釣り場には、外国人観光客の姿もあった。

 (淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)

 
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