同窓の会で助けられたこと幾千度(いくちたび)。徒党を組むなと言われても、やはり同窓の友は、いざというときの強い味方だ。読者の皆さんのなかには、「立教観光クラブ」や「旅行三田会」「旅館三田会」「獨協大学雄飛会」にご所属されている方も多くいらっしゃることだろう。いずれも業界きっての名門同窓会組織である。
去る6月某日、東京ベイ潮見プリンスホテルのレストラン&バー「TIDE TABLE Shiomi」の個室を借り切って、「観光業淑徳会」のキックオフミーティングを開催した。小さく生んで、大きく育てる。発足後の、これからが楽しみだ。
会長には、本連載にも以前、ご登場いただいた「アーストラベル水戸」の尾崎精彦社長にお願いした。99年、淑徳大学社会学部(現在の社会福祉学部)を卒業後、当時の東急観光に入社した。同社転職後、コロナ禍に全株式を取得して社長に就任した。以降、教育旅行の分野で快進撃を続けている。
会の発起人には、東武トップツアーズや日本旅行、ソラシドエア、そして会場となった東京ベイ潮見プリンスホテルで、いきいきと働く若きOB、OGたちが名を連ねてくれた。同窓のよしみ。業界内で手を取り合って、逞しく成長してほしい。
かつての教え子たちを応援しようと、観光経営学科所属の教員たちも手弁当で駆けつけた。大学同窓会や学長、副学長、アドミッションセンター長からご祝儀をいただいたので、秋のホームカミングデー懇親会に、幾ばくか軍資金を残すことができた。身内ではあるが、この場を借りて御礼申し上げたい。
私ごとだが、理事長を務める「特定非営利活動法人交流・暮らしネット」は、まさに同窓の大先輩で元JTB専務の末宗直人さんとのご縁から、ボードメンバーに加えていただいたのが始まりだ。今年で理事長職が10年、来年は設立20周年を迎える。
観光ジャーナリストとしてジャーナリズムの世界に飛び込み、その後、大学教員に転じたが、今も社会とつながっていられるのは、こうした活動があってこそ。拙い私の両脇に手をさしのべて、「えいっ」と引き上げてもらったご恩を生涯忘れることはないだろう。
ただ、残念なことに末宗さん世代が築き上げ、私も所属した「観光業白門会」は、ここ数年、活動が途絶えてしまった。西武トラベル社長(当時)の糟谷愼作さんが同会前身の「旅行業白門会」会長だったころは、頻繁に集まり華やかだった。今もお世話になっているパシフィックリゾート社長の島田恭輔さんはじめ、道祖神の初代社長・熊澤房弘さんやIATA日本代表の藤原勇二さんなど、業界でそうそうたる方々に可愛がってもらった。
勝手にお名前を挙げる失礼をお許しいただきたい。
観光業は、今の時代に求められているコミュニケーション能力の“権化(ごんげ)”のような人たちが多い。打たれ強くて明るくて、転んでもただでは起きない。時代が変化しようとも、そうした人材が生き残っていくのだろう。
厳しい時代だからこそ、同業他社の人たちとの利害を超えた交流が、とても重要だ。辛いことも乗り越えてほしい。親心のような想いで、新しい会の門出を祝った。
(淑徳大学 学長特別補佐・経営学部学部長・教授 千葉千枝子)