【地域創生と観光ビジネス66】盛況御礼「地域が誇る自然資源を活かした観光経営人材育成講座」 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 東京都「大学等と連携した観光経営人材育成事業」に淑徳大学が採択され、「地域が誇る自然資源を活かした観光経営人材育成講座」(全10回)を今秋、開講した。登壇者はいずれも観光の第一線で活躍する人ばかり。地域の特性を生かした取り組みや経営人材の獲得、旅行業や地域おこし協力隊の目線など、多角的に構成した。

 おかげさまで受講者は定員オーバーの盛況ぶり。対面座学での講座最終日には、ご要望に応えて東京・芝公園の中国料理店を貸し切ってオフ会を開催した。熱気むんむんの楽しい交流会となった。

 本講座は、年末のフィールドワーク「みたけ山ネイチャー体験」(第10回)を残すのみ。当日は、御岳山観光協会の靱(うつぼや)矢正会長の案内で、都内屈指のスピリチュアルスポット「武蔵御嶽神社」や「ロックガーデン(岩石園)」をめぐる。宿坊「うつぼや荘」の主人である靱矢氏は同神社の総代で、御師(おし)であり、禰宜(ねぎ)でもある。「この回だけでも参加したい」という受講生もいたほどで、主催者冥利に尽きた。

 東京の観光登山といえば高尾山が有名だが、オーバーユースが課題になっている。御岳山を知ることで、東京名山の印象も大きく変わるだろう。持続可能な観光をめざして今、何が求められているのか、どうしたら良いかを共に考える機会にしたい。

 さて、本事業の公募では、自然資源を活かした観光のほかに、ナイトタイム観光、文化観光のなかから一つを選ぶ必要があった。迷うことなく自然資源の活用を選んだのには理由がある。 

 縁あって、青梅市の「おうめ観光戦略策定・推進懇談会」の会長職を筆者が拝命したのが2年前のこと。その少し前に、本学経営学部は「東京アドベンチャープロモーション協議会」と連携協定を結んで、学生たちのフィールドワークを展開していた。例えば、青梅まち歩きや氷川国際マス釣り場でのフィッシング体験、鉄キャン(BBQ)等々。なかでも霊峰・御岳山でのハイキングは強く印象に残った。自然が恵む神秘のパワーを思う存分、浴びながら、若い人たちが輝いてみえた。

 これまでの講座で特に反響が高かったのが、JR東日本八王子支社地域共創部に所属し「沿線まるごと株式会社」取締役の会田均氏による「沿線まるごとホテル」誕生秘話の回だった。

 東京アドベンチャーラインの愛称で知られる青梅・奥多摩の区間は、人口減少からなる過疎化の影響で空き家が増え、路線の存続すら危ぶまれた。そんななか無人駅の駅舎をホテルのフロントに、空き家をホテル客室に見立てた沿線まるごとホテルの取り組みは私たちのハートをわしづかみした。移動は環境配慮型の電動トゥクトゥク。聞けば同氏は、ここに至るまでキオスクやエキナカ事業を担い、本業の鉄道事業とはかけ離れた経歴だ。今年、奥多摩に開業した「Satologue(さとローグ)」は、沿線ガストロノミーのレストランと本格的な薪(まき)サウナが楽しめて、整うこと間違いない。来春には宿泊棟がオープンする。

 観光開発が自然破壊とイコールの時代は終わった。「共に生きる」という思いが、新たなツーリズムの創出を促す。

 なお、本講座は次年度も開講します。ふるってご参加を。

 (淑徳大学 学長特別補佐・経営学部学部長・教授 千葉千枝子) 


(観光経済新聞2024年12月16日号掲載コラム)

 
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