【地域創生トップインタビュー】勝負の年迎え加速する和歌山県観光 岸本周平知事に聞く


岸本和歌山県知事

世界遺産、万博契機に飛躍

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」が今年で登録20周年を迎え、来年に迫る大阪・関西万博を追い風に観光回復への勝負の年を迎えた和歌山県。観光促進にいっそうの弾みをつけるべく、進取果敢に取り組む岸本周平知事に同県観光の取り組みや課題を聞いた。(聞き手=本社・溝部あゆ美)

 ――県の観光のポテンシャルをどのように捉えているか。

 「聖地リゾート!和歌山」をキャッチフレーズに展開する観光振興は、「Spirituality(精神性)」「Sustainability(持続可能性)」「Serenity(静けさ)」―の三つのSがコンセプト。精神性は、世界遺産登録20周年の舞台である高野山・熊野に代表されるキーワードだ。

 高野山は真言密教の聖地。弘法大師・空海が唐で学んだ密教を日本に持ち帰り、修禅の道場として開創した。

 一方、熊野は豊かな自然に恵まれ、まさに聖地リゾート!和歌山の典型のような場所。「小栗判官」の物語に代表されるように“死”と“再生”が同時に存在する「よみがえりの地」といわれている。絶景はもちろん、深い物語があるところが良さで、そのようなスピリチュアリティを求めて多くの観光客が訪れる。

 ――20周年記念事業の取り組みは。

 JR西日本など鉄道事業者と一緒に「聖地リゾート!和歌山キャンペーン」を7月からスタートした。世界遺産社寺等では特別拝観やライトアップ、限定御朱印の授与が実施されているほか、白装束を身にまとい、平安時代の熊野御幸を再現する「熊野古道リレーウォーク」も行う。県内各地で今しかできない体験や企画を順次展開している。

空港愛称決定、2次交通の充実も

 ――南紀白浜空港の愛称が「熊野白浜リゾート空港」に決定した。今後の活用について。

 熊野白浜リゾート空港の振興については、少し長期のスパンでとらえている。

 まずは国際チャーター便の誘致を進めたい。国際線は、今年2月と5月に大韓航空が運航したが、できれば定期便の運航を推し進めたい。温泉好きの韓国人観光客は近場の九州に集中している状況で、韓国間の運航がかなえば温泉地への誘客が見込める。

 また、熊野白浜リゾート空港の滑走路は全長2千メートルで、大型ジェット機の着陸ができないため、技術的に可能であれば2500メートルに延伸したい。そうすることで誘致の幅も広がっていく。

 現在、日本航空(JAL)が羽田空港間で3往復運航している。羽田の発着枠は厳しい状況であるが、できれば4往復に増便したい。加えて、地方空港との航路づくりも検討したい。例えば、青森や山形など。東北の冬は寒いが、和歌山は暖かい。お互いのお客さまが行き来できるような航路を作っていきたい。

 ――2次交通の充実が課題となっている。

 喫緊の課題として重く受け止めており、早急に対策が必要。現在、熊野白浜リゾート空港から主要観光地への連絡バスがない上、ドライバーの減少などによりタクシー不足が発生している。対策として路線バスの充実やライドシェアの導入を検討しており、キャッシュレス対応も含めた環境整備に努めたい。

 ――来年に開催を控えた大阪・関西万博を契機とした誘客促進は。

 何といっても今年が勝負の年。「和歌山に行くついでに万博に行く」くらいの気持ちで来てもらうために、万博と和歌山をセットした旅行商品を造成し、旅行会社、航空会社にアプローチするなど、国内外の観光客に向けた誘客施策を各方面で進めている。

 ――観光経済新聞社主催「にっぽんの温泉100選」にも入選する温泉地の魅力について。

 日本三美人の湯として知られる龍神温泉をはじめ、日本三古湯の一つ白浜温泉、県内随一の豊富な源泉数を誇る南紀勝浦温泉など和歌山には良い温泉がたくさんある。県外のお客さまにお越しいただくには不便な立地にある温泉地が多いが、時間と手間がかかるからこそ良いという人もいると思う。不便さを逆手に取ってアピールできればと考えている。

 ――和歌山の魅力を三つ挙げるなら。

 一つ目は「歴史と物語」。神仏習合が色濃く残る那智山や高野山エリアなど、古来より、信仰が続くパワースポットが多く、神様、仏様と一緒に暮らしているような感覚を体験できる。

 二つ目は「食」。和歌山は海、山、川の幸に恵まれ、フルーツの名産地でもある。実は、みそやしょうゆなどの発酵食品も和歌山発祥で、豊かな食文化を持つ。大阪・関西万博でもフードコンテンツを目玉に展開していく予定だ。

 三つ目は「人」。和歌山は昔から移民が多く、異国の地でさまざまな困難を乗り越え生活基盤を築いてきた進取の気性に富んだ人が多い。そして、懐が深く、世話上手な一面もある。そのような県民性がプラスに働き、外国人の受け入れにも前向きだ。

 ――観光客を受け入れる県内の旅館・ホテルにメッセージを。

 宿泊施設の皆さんには和歌山のファンを増やしてほしい。何度か訪れるうちに和歌山が好きになり、関係人口が増えれば、そこから2地域居住や古民家を借りる人も出てくる。

 宿泊施設は最初の接点になるので、「移住・定住促進の窓口」でもあると思っている。

 岸本 周平氏(きしもと・しゅうへい)1956年7月12日、和歌山県生まれ。68歳。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。2009年、衆議院選挙初当選後、5期連続当選。22年12月から現職。現在1期目。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒