「強靱(きょうじん)化」の「靱」という字を、やっと覚えたよ。二階俊博代議士が、自民党の中に国土強靱化を推進するために委員会を作り、福井照代議士が事務局長を務めて研究会を重ねていた頃、私に語った言葉だ。三重県から和歌山県にかけて、雨量は日本一ゆえ、雨のたびに災害を重ねてきた。二階代議士の故郷であり、選挙区だ。犠牲者も多く出してきた。
藤井聡京大教授は、国土強靱化の理論武装のエースで、多数の国会議員たちに影響を与えた。後に内閣参与としても活躍されたが、藤井教授ほど学者として国政を動かした人を他に私は知らない。著作を何冊も読ませていただいたが、理解がしやすい学術書だった。
2020年11月に「第10回自治体災害対策全国会議」がオンライン形式で開催された。自民党が国土強靱化を本気になって取り組むようになって以来、東日本大震災が起こって以来、読売新聞社が応援のための共催をするゆえ、この会議は地方自治体にとっても重要なものとなってきた。近年の自然災害の被害は甚大であるため、災害への備えや復旧・復興に関する情報を共有する必要がある。また、自治体や地域の災害対応を強化しておかねばならないので、この全国会議は大切だ。
2020年12月中旬、私は日体大生が相撲のアマチュア横綱になったので自民党幹事長室を訪れた。学生が和歌山出身だったので、幹事長への表敬訪問。だが、二階幹事長は多忙を極めていた。数日後に令和3年から7年度を期間とする、国土強靱化の5カ年加速化対策を閣議決定するために会議が目白押し。
全国会議では、コロナ禍での災害対応や防災と福祉の連携の在り方についても議論された。県と市町村一体で支援に取り組むべき。応急対応業務を導入すべし。水害には入念な備えが求められるので最優先に取り組むべし。さまざまな有意義な意見が出された。コロナと共生を考慮して緊急避難所を設置しなければならない。災害も毎年同じでないゆえ各地から多角的な意見は有効である。
政府が閣議決定した背景には、災害に強い地域づくりがある。各省庁が老朽インフラの修繕など計123の防災・減災事業を重点的に実施するという。自治体支出分や民間投資なども含めた総事業費は15兆円程度とした(産経新聞)。平成30年度から3カ年で6兆8千億円の緊急対策を政府が実施したものの不十分だったという反省もある。大規模災害から地域の人々の暮らしや財産、生命を守る備えが行き届かず、国民に大きな不安を与えた。
菅義偉総理は、「省庁、自治体や官民の垣根を越えて、引き続き災害に屈しない国土づくりを進める」と強調された。二階幹事長が、平素から同じ発言をされておられるが、リスクへの対応力強化が求められる。また各自治体は、隣接する自治体との連携、一体化が必要だ。それら地域の力が防災にも必要であるに加え、復興を後押しする。ともかく、あらゆる垣根を取り払うことが住民を救う。
政府が取り組もうとしている事業は、まず国土交通省が道路関連施設の老朽化対策である。地震があれば、古い高速道路が危ない。各自治体は、高速道路のみならず、国道にかかる橋などもチェックして国に報告すべしだ。さらに、公立小中学校施設の長寿命化に力を入れ、相当前倒しするという。これらの施設は、災害時には避難所になるため強靱化を推進せねばならない。
デジタル技術の活用を叫ぶ政府は、気象庁が最新のコンピューターを用いて「線状降水帯」の予測精度向上を目指すという。令和7年度までに大雨への警戒を半日前から呼び掛けることができるようにするという。入念な備えを優先するには、正確な情報がほしい。
いずれにせよ15兆円の国土強靱化である。自分たちの自治体の各施設の状態はどうなっているか自分たちで調査、チェックして政府に届け出してほしい。政府の調査力も大きかろうが大都会に集中する恐れがある。地方自治体が個別に調査することも重要だ。この予算は大きい。住民の命を守るために生かすべし、だ。