【地方再生・創生論 224】外国人材の支援組織「NAGOMI」 松浪健四郎


松浪氏

 私の高校時代の考えは、どうすれば有名大に進学できるかではなく、どうすればアメリカの大学に留学できるかであった。先進国アメリカに行きたい、「洋行」なる語が幅を利かせて、どうしても留学したかった。が、1米ドル360円、新任高校教員の給料が2万5千円、留学は裕福な家庭の者であるか、奨学金を受けることのできる優秀者でしか困難であった。で、私はアメリカの各大学はスポーツ奨学生制度のあることを知った。

 アメリカに憧れ、アメリカを学びたい、可能ならアメリカで働きたいと期待した私の青春時代。レスラーとしての実績と実力を評価され、私は東ミシガン州立大に留学できたのである。必死になって努力した思い出が懐かしい。

 で、現在では、東南アジアの若者たちが夢として、日本で学びたい、日本で働きたいと考えるようになっている。他方、深刻な人口減少に直面するわが国は、社会や経済を支えてくれる人材の確保が焦眉の急となっている。

 ところが、いつの世にも悪徳業者がいて、日本へ行きたいと願う若者たちを送り出すブローカーが出現、被害を受けて泣く若者たちが少なくないのだ。過剰接待やキックバック、若者たちの夢を逆手にとって商売にするらしい。特に技能実習生を目指す多くの若者たちが、想像できぬくらい悪徳業者にだまされている。せっかくの日本行きが、大きな悲劇と化し、失望する東南アジアからの若者が増えている。

 そこで、元自民党幹事長であられた武部勤氏や元ベトナム大使であられた梅田邦夫氏らが中心となって、技能実習生等を失望させない、差別を受けさせない、待遇等の改善など、多岐にわたって支援、救済する組織を立ち上げた。「一般財団法人・外国人材共生支援全国協会(NAGOMI)」である。

 この協会は、グローバル人材共生社会の実現のために積極的に提言を行い、政府にジワリ、ジワリと影響を与えつつある。特に技能実習制度を1993年にスタートさせたが、この制度や実習生を応援する、保護する団体はなかった。

 新たな在留資格である「特定技能制度」が創設され、より多くの外国人の人材受け入れが可能となった。実習生数は、既に41万人を超え、全国に散らばって貢献してくれているのだが、悲しいかなさまざまな問題も起こっている。

 が、相談すべき組織がなく、受け入れ団体、企業も困るばかりか技能実習生や特定技能者も困る。トラブルをさばくだけの団体や組織ではなく、外国人が日本で有意義な生活を送れるように協力する全国組織が「NAGOMI」である。

 各自治体は、この組織について理解し、わが町で実習する外国人たちにこの組織を宣伝していただきたい。また、実習生を受け入れている企業・団体にも「NAGOMI」の入会を勧めてほしい。

 日本が外国人に対して親切であり、好感をもって対応してくれる国であることを示さないことには、アジアから日本へやって来ない事態を迎えてしまう。既に台湾、韓国等がライバルとなっていて、日本一辺倒でないことを認識しておかねばならない。それでなくとも、日本語という困難なハードルを持っているのである。

 受け入れ団体、企業等における日本人従業員の高齢化が進むが、その中に若い外国人の技能実習生が交ざって活躍してくれれば活性化し、生産力も向上するであろう。地方自治体の中には、技能実習生を含めた外国人と地域との交流を推進し、地域活性化のエネルギーに転換しているところも散見する。

 「NAGOMI」は、さまざまな提言をしているが、各自治体はグローバル人材共生会議を設置すべきだとの一案もある。市町村に住み、就業している外国人たちを失望させないために、産学官でチームを作り「グローバル人材共生会議」を各自治体につくる。日本は安心できる、信用できる国、地域であることを外国人たちに肌で感じさせる必要がある。外国人を大切にし、親切に接して信頼を獲得すべきだ。

 
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