内閣府地方創生推進事務局が、「まち・ひと・しごと創生基本方針2021について」を発表した(令和3年6月)。「ヒューマン」「デジタル」「グリーン」の3本柱である。相当なコロナ禍の影響を受けた基本方針といえる。感染症によって、人々の意識や行動の変容が見られ、それらを踏まえたものとなっている印象を受ける。
「ヒューマン」、テレワーク実施率が急増し、若い世代の地方への関心が高まってきた。しかも個人だけではなく、企業までもが大都会から地方へと転出の動きがみられる。
地方へ行けば、テレワークの仕事以外、農業や多様な趣味に興じることもできる。何よりも土地、家屋、家賃が都市部よりも安価である。流通の発達により、地方で暮らしていても、欲しい物の入手を容易にできる社会となっている。子どもたちを四季の自然環境の中で育てることができる。東京から地方へ転出する人たちや企業、その流れは続きそうだ。
政府は「転職なき移住」を推進していて、地方創生テレワーク交付金を出している。例えば静岡県焼津市では、交付金を使って焼津漁協が「港の倉庫」をテレワーク交流拠点に改修した。プライバシーを確保しつつ多数のワークスペースを提供できるようにし、働く人たちが地域の人たちと交流できる拠点も整備した。
企業と自治体を結ぶ情報提供、相談体制等の整備が求められる。地方自治体が、どうすればテレワークする人たちを招来させることができるかを研究せねばならないのだ。そして、地方創生テレワーク交付金を獲得するべきである。各自治体の行動力がモノをいう。
また政府は、企業の地方移転の促進にも力を入れている。企業の本社機能の地方への移転等を通じて、地方での雇用創出を支援するため、「地方拠点強化税制」がある。企業が本社機能を東京23区から地方に移転させれば、税制優遇の措置が講じられる。建物の取得や地方での雇用を促進させれば、各種の税額控除もあり、自治体は企業に宣伝すべきである。
さらに子育て世帯の移住を推進している特色もある。結婚、出産のしやすい環境の整備も少子化対策や女性活躍の推進の観点から、政府は自治体を応援しようとしている。「ヒューマン」視点からの具体的な取り組みを自治体が行い、多様な交付金を入手できるように工夫、研究すべきである。
2本目の柱である「デジタル」については、自治体の職員の能力が問われている。デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進を通じ、地理的・時間的な制約要因に関係なく、いずれの地域でも同様のサービスを提供する。デジタル技術を活用した新しい価値創造の仕組みを構築すれば、地域社会の課題解決や魅力向上につなげると内閣府地方創生推進事務局が言う。まず5Gなどの情報通信基盤を早期に整備すべきだ。5G基地局やこれを支える光ファイバーなどのICTインフラの整備を加速させる必要がある。
政府はデジタル分野の人材支援も行い、地域におけるDXを支える人材を確保したり、育成するという。地方自治体が、データ活用を促進するための支援も行うという。ともかくDXの推進が大切だ。政府はGIGAスクール(小中学生に1人1台のPCと高速ネットワーク構想)や遠隔医療の分野にまでデジタル化させ、その取り組みの支援を行うという。自治体は研究して政府を利用すべきである。
最後に「グリーン」の視点である。脱炭素化の推進により、地域経済の活性化を目指す。地方創生と脱炭素の好循環の実現に向けて、エネルギーの地産地消をはじめ、CO2の排出量の少ない輸送システムの導入、公共交通の利便性向上、建築物への木材利用等を推進させる。
農林水産分野や国土交通分野等における取り組みを推進している。「グリーン」についても、政府の支援を得ることができるため、さまざまな取り組みが各自治体に求められている。どこよりも早く手をつけてほしいと願う。