「障害者」なる表現は、わが国の国語とはいえ、ひどすぎる。「害」を昨今ひらがなで「がい」と表記する自治体も増えてきたが、そもそも「害」が非人間的だと私は思う。「ハンディ・キャップド・パーソン」（Ｈａｎｄｉｃａｐｐｅｄ Ｐｅｒｓｏｎ）と、英語で表記すれば、いささか印象を緩和させると私は考える。省略して「ＨＣＰ」がいいと思うが、政府も関係者も無頓着すぎる。
便宜的に「障害者」なる語を用いてはいまいか。もし、己の身辺に「障害者」がおれば、この表記は人道主義に反すると痛感するに違いない。明確なのは、「障害者」になりたくてなった人は皆無だ。「害」には、いい意味がない。損なうこと、悪くすること、と国語辞典にあるが、人間の表現に用いるにはひどすぎる。私たちは、ハンディを背負う人たちに対して配慮が足りないことに気づくべきだ。
日体大は7年前、北海道網走市に日体大付属高等支援学校を開設した。必ず共生社会がやって来る、日本で私立大が創立した最初の支援学校として対応すべきだと考えたのだ。しかも、全国の支援学校の教壇に立つには、支援学校教員免許が必要となった。日体大もこの免許を出すために実習校が必要となる。それでも、日体大に続く大学が出現しないのは、経営が困難で赤字を覚悟しなければならないからであろう。2022年から政府は、日体大のこの支援学校にも支援してくれることとなった。
「障害者」に関する記述をしたのは、私たちの社会は、バリアフリー政策が定着したとはいえ、まだまだ不十分で配慮が足りないと感じるからに他ならない。2013年、知的障害などのため成年後見人が付いた人の選挙権が、司法判断を経て回復した。だが、そのために容易に投票できるように全国の投票所は対応しているだろうか。常に弱者ファーストの姿勢が大切だが、投票という大切な表現の場で苦労させてはならないのは申すまでもない。手間がかかろうとも、投票所は障害者でも行きたくなるような場にする必要がある。
障害者の人権を健常者と同様に扱わねばならないのは法の教えるところだが、政策を遂行する上で、どうしても面倒くさくなる。が、この面倒くさいことを積極的に行うのが政治である。先進国であるかどうかの一里塚、各自治体は心しておかねばならない。東京都狛江市は、知的障害者の生徒のために主権者教育を続けてきたという。その知見をまとめて、全国の特別支援学校へ提供している。小さな事象のように映るかもしれないが、重要な人間教育である。狛江市に拍手を送りたい。
私たち国民は、成人して有権者になれば、その意識を高めるために主権者教育が必要となる。児童会や生徒会等の役員を選考するために、小学校時代から投票についての体験を一般的には行っている。この投票は模擬とはいえ貴重な体験となろう。果たして、かかる模擬投票を全国の特別支援学校でも実施されているのだろうか。実施していない学校では、ぜひ、投票意識を高めるためにも行うべきだ。
障害者の各種の選挙への立候補も目立つようになってきた。投票される側に挑戦できる時代を迎え、多様な主張が国民、有権者に理解されるようになってきた。障害者が地方選挙に立候補しやすいように、また不利益を被ることのないように、行政側は投票所をも含めて対応してほしい。障害者の障壁があるかないか平時よりチェックし、「選挙権」の面においても平等を堅持しなければならない。
パラリンピックを例にとるまでもなく、障害者のためのイベントも盛んになっている。日体大は入学試験の際、実技試験が特色で実施されていた。が、「スポーツ振興法」が成立、「見る、する、支える」が対等に評価されるようになったため、実技試験を廃止した。で、障害者も容易に入学できるようになった。彼らの頑張りが一般学生を刺激していて、いい教育環境を生み出した。あらゆる面において、私たちは障害者を差別することなく、共生できる学校、社会を構築せねばならない。
