【地方再生・創生論 319】学校給食は無償化すべきだ 松浪健四郎


 病弱の友人がいた。彼は学校を休むことが多かった。担任の先生は、帰り道に彼の家があったため、私に給食の半紙に包んだパンを届けさせた。お母さんがうれしそうに私にお礼を言った。

 先日、テレビを見ていると、評判の悪い「マイナンバーカードを取得すれば、学校の給食代を免除する」と、ある自治体の市長が述べられ波紋が広がった。カードの普及が進まないので、給食代をエサにしたのだろうが、あまり感心できない発言だった。が、給食の費用の問題を提起し、「学校給食法」について考えさせる機会のために一石を投じた。学校給食を完全無償化する自治体が増加しつつあり、それを選挙の公約にする候補者も増えている。

 ただ、財政に余裕のある自治体が無償化でき、財政の苦しい自治体は有償というのは、どう考えてもおかしい。法律は、施設等の一部については国が金を出すことになっているにつけ、食する児童や生徒についての負担は保護者がすることになっている。が、生活保護を受けている家庭の子弟は一部の補助を受けることができる。日本国憲法では義務教育の無償が保証されているだけに、各自治体は政府に主張すべきだし、政府も支援について考慮しなければならない。どうもどの自治体も政治家も無関心でいるかに映る。給食は単なる食育だけではなく、大切な教育の目標でもある。

 学校給食の目標は、まず適切な栄養の摂取だ。次に健全な食生活の習慣をつけること。また、明るい社交性および協同の精神を養う。サービス精神の涵養(かんよう)もあろうか。食生活が農業の上に成り立ち、自然を尊重して環境の保全について学ぶこと。農業をはじめ、調理してくれた人たちへの感謝を学ぶ。日本食をはじめ各国の食文化について学ぶ。食料生産、流通や消費について正しい理解をする。コロナ禍で「黙食」が求められたが、本当は楽しく会話を楽しみながら食事することが望まれる。私などは、いつも先生に「しっかりかんで静かに食べなさい」と注意される児童だった。いずれにせよ、これだけ食育の目標があるのだから、政府は無償にすべきであった。

 地産地消が叫ばれて久しいが、地元産の野菜や商品を給食に用いて、地元の農業や商業について学ぶことも大切である。肥料や農薬の知識を身に付けるばかりか、環境問題についても学ぶことができる。栄養士の免許を有する者か、栄養教諭の免許を持つ者が給食の管理を行う食育。バランスのとれた食事は、子どもの発育発達のためにも重要である。給食の役割についての認識が不十分で、費用を保護者が負担して当然という思考が定着してしまっているが、各自治体マチマチという状況は義務教育の中では不自然すぎる。

 昭和29年(1954)にできた「学校給食法」は、幾度も改正されてきたが経費の負担については保護者負担そのままである。無償化についての議論は、各家庭の収入増によってなされずじまい。また、日本人の国民性として、タダ食いを容認しない風潮があり、テーマにしづらい一面もあった。憲法議論をする中でも、義務教育の無償化は議題にもあがらず、安全保障面に片寄りすぎている印象を受ける。私立学校に対する助成金も憲法違反と言われながらも、それも議題にあがらない。日本人は、教育については寛大なのだろうか。

 しかし、「学校給食法」では、給食の提供が義務になっていないのだ。カリキュラム通り授業を行えば、夕方近くまで子どもたちを拘束せねばならない。だとしたなら、昼食はどうするのか、どうしても給食が必要となる。中学校では弁当持参も多くて、給食で統一されていない。義務教育の無償という理念から、中学校も給食を提供してほしい。自治体の財政に限りがあるため、政府が交付金によって支出すべきであろう。

 私たちの小学校時代、給食のミルクは米国援助のもので、ちっともおいしくなかった。残すと先生から爆弾の声が飛んできた。以来、私たちは食べ物を残してはならないと教えられた。

 
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