【地方再生・創生論 321】市民農園の普及に知恵を 松浪健四郎


 私が3年間も住んだ砂漠の国であるアフガニスタンは、まぎれもなく農業国であった。猫の額ほどの田畑でも、工夫して水を引いて農作物を作っていた。私たちは、食べなければならない動物ゆえ、食料を手中にするために努力する。それは世界共通であり、人類の宿命である。ほとんどの国は農業国と表現できると私は考える。1万年前、シュメール人が農業を始め、その伝統が守られている。

 首都カブール市の借家の庭を耕した。カボチャ、二十日大根を植えて収穫した。JICAの農業指導の専門家がいたので、助けていただいた。種をまいたり、苗を植えたりして、肥料もいただく。いい野菜を作るには、素人では難しい。餅は餅屋なのだ。

 子ども時代、わが家に田畑があったけれど、私は農業という土いじりに興味をもたなかった。が、大人になると園芸が趣味となり、庭で土いじりが休日の仕事となった。近隣の皆さんも、バラや皐月(さつき)、盆栽等の趣味をもたれ、屋外で作業を楽しんでおられる。

 特に私はサボテン栽培に熱中する。その昔、全日空の社長であられた大庭哲夫氏は、サボテン、ラン、盆栽を趣味とされていた。御子息と交流のあった私が、御尊父の死後サボテンをもらい受けることとなった。温室を建て、本格的に取り組み現在に至っている。休日には温室での作業が仕事、出掛けることもできないほどだ。裏庭に野菜も植えている。畝をこしらえ、ホームセンターで苗を買ってくる。文字通り猫の額、もうちょっと広い耕作地が欲しくなる。といっても、買う力などはない。

 が、少し離れた土地で、数人の人たちが菜園作りを楽しんでいらっしゃる様子を見る。「市民農園整備促進法」という法律が、自治体の土地を住民が農地として使えるようにしているのだ。

 市民農園の整備を適正かつ円滑に推進するための措置を講ずることにより、健康的でゆとりある国民生活の確保を図るとともに、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資する目的で、この法律ができたのだ。

 そこで、この法律を読んでみる。ややこしくて、私自身もきちんと理解できない。

 市民農園を作って、市や区も条例を作って個人が借りられるようにするのだが、ややこしい。平成2年9月から施行された法律、市民農園を借りるべく応募しても倍率が高くて抽選に当たりづらいという。自治体が市民農園に熱心であれば、十分に土地を確保できるだろうが、それほど熱心でないかに映る。

 無理もないのは、さまざまな手続きが自治体にあって複雑であるようだ。市街化区域であれば、市民農園区域の指定は不要。特定農地貸付方式によって地方公共団体および農協以外の者が開設する場合は、市町村等と貸付協定を結ぶ。そして、市民農園開設者が整備運営計画を作成し、市町村が認定する。

 また、市街化区域以外であれば、基本方針に基づいて市町村が市民農園区域を指定することができる。

 簡単に記述しているが、こと農地については、貸付、転用、開発行為等を行うに当たり、さまざまな決まりがあって面倒くさい。住民のレクリエーション等のための市民農園の整備は容易でないのが実情のようだ。健康的でゆとりのある国民生活の確保、良好な都市環境の形成と農村地域の振興をもっと容易にできるようにしてほしい。

 立派な入れ物たる「市民農園整備促進法」が施行されても、どうも絵に描いた餅の感じで、ちっとも市民農園整備を促進させる法とはなっていない。市民農園の賃貸に関するトラブル防止もあろうが、容易に貸し出せる方法はないのだろうか。可能な限り、市町村の自治体は、市民農園普及のために知恵を絞ってほしいと望む。

 かなり体力も落ちたが、日光浴をしつつ土いじりがしたい。自分で作った野菜をおいしく食べたい。耕作の作業は、一種の体操であり、トレーニングである。まさに健康的な営み、現代社会では最高のぜいたくだと思えるのだ。

 
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