【地方再生・創生論 325】脱炭素化へ「下水熱」の活用を 松浪健四郎


 時間のある時は各種の印刷物に目を通す。ボンヤリと物を考えることのできない性格だから、活字がないと寂しく感じる。で、各政党の機関紙にも目を配る。最近、自民党の『自由民主』が面白い。岸田政権になって、「新しい資本主義の扉」なるコラムが特筆すべき読み物になっている上、新しい法律や知識、事象について教えてくれるのだ。

 「新たなエネルギー・下水熱」(令和5年7月25日号)という大見出し、省エネ・脱炭素化に大きな期待、と書かれている。「下水熱」とは、あまり耳にしないが、令和2年12月に政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」にも、その利用推進が明記されているという。「地下熱」についての若干の知識があるとはいえ、「下水熱」についての知識は私には皆無だった。

 物が腐敗すると、悪臭とともに熱を生むことは、生活体験上、身に覚えがあるが、この下水の熱を利用するという発想に頭が下がる。太陽光や地中熱等の再生可能エネルギーの仲間に「下水熱」を加える政府、その利用推進が成長戦略の一端となっていて、全国各地で官民が取り組んでいるという。「下水熱」が利用できるのであれば、そのメリットは大きいばかりか、脱炭素に期待できる感じがする。

 下水の水温は、大気に比べ年間を通して温度変化がなく安定しており、「夏は冷たく、冬は暖かい」という特徴がある。この温度差を利用した熱エネルギーを「下水熱」という(自由民主)らしい。爆発的なエネルギーにはならないが、温度差エネルギーを利用できるのは、今まで思考しなかっただけに朗報である。たとえ、わずかな熱量であっても近代科学の力は、それを有効利用できるようにするほど進歩している。

 砂漠の地の燃料は、家畜(牛、馬、ラクダ等)のふんである。ふんを乾燥させて燃料として用いる。高温にはならないが、料理や暖をとるには十分である。砂漠地帯にあっては、利用できるものは無駄にせず活用している。

 「下水熱」の活用は、再生可能エネルギーとして注目されるようになったが、今まで私たちは考えもしなかったのである。科学の発展もあるが、何でも利用しようとする姿勢が求められているのは申すまでもない。

 下水は日々の生活で安定的かつ豊富に存在する。この熱(温度差)エネルギーをヒートポンプ等で活用することによって、省エネルギーと脱炭素化が期待されているのだ。下水処理場付近での限定的な利用にとどまっていたが、平成27年に下水道法が改正された。民間事業者による下水道管内への熱交換器の設置に関する規制が緩和されたため、下水処理場から遠く離れた場所においても下水熱の利用が容易になったことを知っておかねばならない。

 愛知県豊橋市の農業法人では、下水熱を利用して農業用ハウスで作物を栽培している様子が報じられている。また、札幌市では、下水熱を用いて路面融雪(ロードヒーティング)の実証実験の様子も伝えられている。下水管の熱で温めるパイプを敷くと、雪が解けるという。工夫次第では、この下水熱をさらに活用できるに違いない。地域によっては、活用の幅や種類は異なろうが研究する必要がある。

 国土交通省では、行政や民間事業者による下水熱の活用拡大を推進するため、取り組みの事例等をまとめたマニュアルを作成した。各自治体は、この資料を入手して、下水熱の活用について考える必要がある。下水処理場だけではなく、下水道管を用いて熱交換器の設置を検討し、今まで活用しなかった新しいエネルギーに挑戦していただきたい。
 私たちは、脱炭素化のために、下水熱の活用を急ぐべきである。農業、寒冷地での路面融雪、空調の動力削減等、研究に取り組んでほしい。まず、自治体がリーダーシップを発揮し、民間業者を巻き込んで下水熱を利用すべきだ。

 (参考『自由民主』令和5年7月25日号、自由民主党新聞出版局)

 
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