【地方再生・創生論 340】関東大震災から100年、これからの東京防災 松浪健四郎


 2023年の夏は暑かった。エアコンなしでは生活できず、寝ることすら困難であった。そこへ台風、鳥取県や島根県の人たちが被害を受けた。私たちの住む関東地方は、雨も降らず水銀柱の高さに泣くばかりであった。

 が、2023年とわざわざ記述したのは、1923年(大正12年)9月1日に関東大震災に襲われてから100年であるからだ。地震がどれだけ怖いか、私たちは東日本大震災で経験した。関東大震災は、津波の被害はなかったにつけ、大火災が起こって大被害を受けた。強い揺れで住宅が全壊したことによる死者数は1万1千人で、火災による死者はなんと約9万2千人といわれ、行方不明者を含めて10万5千人の犠牲者を出した。わが国の自然災害史上、最悪の震災だったが、100年もたつと私たちはその事実をも忘れてしまっている。

 東京都の広報紙8月号(2023年)は、「関東大震災から100年」の特集。進化し続ける東京の防災について詳述していた。震災後、東京都は三つの観点で防災力の強化を進めてきたとアピールする。まず、「都民の防災意識の向上」を図り、避難所の確認や家具転倒防止等を意識させる。次に「地域防災力の強化」である。地域ごとに避難訓練を行い、帰宅困難者対策を徹底する。かつて本紙で私はその帰宅困難者対策について記述した(2020年4月18日号)。東日本大震災からの教訓、交通網がストップし、多くの人たちが帰宅困難者となったのだ。三つ目は、「強靱(きょうじん)な街づくり」である。耐震化や不燃化を推進して、無電柱化にする。いずれも小池百合子都知事が口グセのごとく話す政策であろう。

 関東大震災は、マグニチュード7.9(推定)であったが、2次災害としての火災被害が大きかった。この火災をいかにして防ぐか、東京都の課題であった。広報紙によれば、大震災の後、帝都復興院総裁であった後藤新平が中心となり、近代的な都市計画手法を取り入れた復興計画が策定されたという。街路、橋梁、河川、運河、公園および土地区画整理などの事業が行われ、現在の東京の礎が築かれたという。昭和通りや永代通りは、幹線道路としても今も都市の重要な役割を果たしている。あの広い道路は、災害時に役立つであろうことは容易に想像することができようか。

 小池百合子都知事は、産経新聞の「女子の兵法」(7月23日号)なる連載コラムに、「気候と水害、都市の備え」について書いている。インドでの国際会議で「水の安全確保」について以下のように発表したという。「河川の水質改善の取り組みとして、処理能力の高い浄化槽や、層の深さが倍で用地を効率的に活用できる下水処理、雨天の時に流れてくる水に渦を発生させ、その流れでごみを河川に流さず、水再生センターに導く仕組みを紹介。豪雨対策としては、洪水を一時貯留し、河川の氾濫を防ぐ巨大な地下空間にトンネル型の水をためる地下調節池を紹介した」。

 その巨大な地下空間のトンネルを見学したくて都建設局河川部主催の見学会に申し込んだが、残念ながら抽選もれ。いまだ見ていないが、小池都知事が自慢するくらいだから、ぜひ見たいと願っている。関東大震災から100年の節目に合わせ、都は総事業費15兆円規模の「TOKYO強靱化プロジェクト」を策定し、災害対策を強化している。政府は、「改正国土強靱化基本法」を成立させ、地方自治体、関係団体の5カ年加速化対策後も安定的な国土強靱化の推進を目指す。防災・減災のためには、まず、国土強靱化が重要である。異常気象が激甚化、頻発する時代、どの自治体も強靱化のために対策を練り、大規模な被害を抑制せねばならない。

 小池都知事は続けて書く。「中小河川の洪水対策や低地河川の高潮対策を強化するとともに、調節池を海まで延伸し、線状降水帯のような長雨にも継続的に効果が発揮できる対策を進める」という。壮大なプロジェクトについても記していたが東京都は別格という気がする。

 
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