【地方再生・創生論 343】外国人労働者も生活しやすい地域へ 松浪健四郎


 米国に留学した私は、授業料と生活費を保障された1級の特待生であった。しかし、衣服や外食代が必要なため、どうしてもアルバイトをせざるを得なかった。十分に英会話ができないので、農作業やガソリンスタンドという時給の安い仕事をする。当時の米国も人手不足で、外国人や留学生を雇用していた。で、現在のわが国も人手不足。農業、漁業、観光業等々、外国人労働者なしでは成り立たない状況下にある。少子化は、経済をも直撃中だ。

 私の大学内にあるローソン、日本語の上手な外国人が働いている。テキパキと仕事をこなすので感心させられる。もう全国で、あらゆる仕事に従事する外国人が増加している。技能実習生が増加し、日本経済を支えてくれていて、彼らなしでは商売できず困ると雇用主たちが口をそろえる。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の職場では、なかなか日本人を集めるのは困難だという。私の友人のビル・メンテナンス会社を経営する社長は、雑誌や新聞に募集広告を出しても、なかなか日本人を集めるのは難しいと嘆く。だが、外国人であれば、仲介業者に依頼すればすぐに集めてくれるという。特定技能や技術実習で来日するベトナムや中国のアジア系の外国人だ。

 それでか、住民登録する外国人が10年前に比して2倍以上かつ100人以上増えた自治体は280市町村(約16%)に上ることが、毎日新聞の集計で判明したという。いよいよ外国人との共生社会化が進んでいる証左であろう。

 ベトナムからの技能実習生が、農業や製造業などの地方における産業を下支えしてくれている。特に北海道の小さな町に外国人労働者の増加が顕著である。日本とベトナムは友好関係にあり、閣僚級の往来も頻繁で、労働者の供給源となっている。

 10月下旬、二階俊博代議士が小泉龍司法務大臣とインドネシアの駐日大使であられるヘリ・アフマディ氏と会食するので、私にも出席の案内があった。インドネシアには、多数のイスラム教徒がいるため、私にもインドネシアについて勉強せよ、という二階先生の親心であった。二階先生は友好議連の会長、小泉新大臣を大使に紹介したかったようだ。というのは、政府は技能実習制度の見直しを進めていて、転籍の要件緩和が確実視されるに伴い、インドネシアからの実習生の派遣を増加させたいという思惑を感じ取った。人材獲得競争は、国際的には厳しくなっている。円安の影響もあろうが、賃金の高い韓国や台湾、それに欧米も人材を求めているのである。

 だが、大使は、「日本の治安の良さは魅力的である」と語られるように、安全・安心が最大関心事であるようだ。加えて、日本文化や日本人好きのアジア人が多いらしい。

 待遇も良くて、生活のしやすい地域社会であらねばならない。政府が労働者のための外国人を増やす政策をとっても、住む地域社会や人々が歓迎してくれなければ、外国人にとってはストレスをためる結果となり、転籍を増やす心配となる。自治体は、外国人労働者の増加にいかに対応すべきか、多様なプログラムも準備せねばならない。転籍の理由に、地域の住環境も左右することを理解しておかねばならない。

 高齢化が進み、介護業界も外国人が不可欠な存在となって久しい。ベトナムやフィリピンに日本語学校を作り、そこで日本語の学習をさせて訪日させる団体もある。また、日本で語学学校を作り、そこに留学させてアルバイトをさせながら資格を取らせる団体もある。あの手、この手で外国人労働者の確保に必死であるが、それだけ日本社会は労働人口不足に陥っているのだ。

 この認識は、政府や業界だけではなく、各自治体もしっかり理解しておかねばならない。外国人には、単に親切、協力するだけではなく、彼らにも活躍できるチャンスを工夫してほしい。日本経済にとどまらず、社会保障面でも外国人が貢献してくれることになる。少子化、労働者不足、これが現在の日本の弱点なのだ。

 
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