【地方再生・創生論 344】デジタル人材育成は自治体から 松浪健四郎


 私は機械操作の苦手人間である。こうして記述する原稿も全て手書き、用紙のマス目をボールペンで埋めている。だが、世の中はデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代、苦手だとか嫌いといって逃げてばかりおれなくなった。そこで日経文庫の『AIまるわかり』(古明地正俊・長谷佳明共著)を読んだ。が、あまり理解できなかった。

 政府は、「デジタル田園都市国家構想」をぶち上げた。デジタル技術の活用によって地方を活性化したいという企て、そのための人材育成に力を入れつつある。人口減少や産業空洞化の他に地域によってはさまざまな課題を抱える地方公共団体、これらの地域経済をいかにして成長させるか、この国家構想を実現させるためにはデジタル人材が必要となる。政府は今後5年間で230万人の育成を目標とし、成長戦略を後押ししようとしている。

 デジタル人材は、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏に集中していて就業中。デジタル化は東京圏が圧倒的に進行し、大阪府や愛知県は千葉や埼玉にも大きく水をあけられている。これでは地方の人材不足は著しくあり、地域DXの推進は困難というしかない。デジタル化の遅れで日本の国際競争力は低下しているのに、地方にあっては途上国並みなのだ。特に地域の中小企業のDXを促す施策が求められるに加え、自治体の職員たちにもデジタル研修が必要である。

 私たちの日体大では、東大教授で日本ディープラーニング協会(JDLA)理事長であられる松尾豊氏を招いて、DXの加速する話や失敗を恐れずに試行錯誤、実行することの大切さを説いていただいた。400人の教職員が受講したが、DXをきちんと理解し、カルチャーを変化させることやディープラーニング(深層学習)がAIの発展を支えることなどを学んだ。難しく考えずに、まず実行する。楽しくなってくれば技術は加速するとも話され、有意義な時間をもつことができた。

 さて、DXという言葉が広がり日常のものとなっているが、果たしてその意味をきちんと理解しているだろうか。必要なITスキルや知識力を向上させ、デジタル人材へと向かわせる。ITスキルを習得させるために自治体によっては特色ある取り組みを行っているが、それがDX推進に拍車をかける。

 自治体職員のITスキルを向上させ、その人材を用いて各企業で研修会を開催するのも一案であろう。地方のデジタル人材の育成は、まず自治体から始めて普及させることを考えるといい。デジタル人材の確保は、自分たちの手で育成することから開始すべきであろう。

 地域経済成長のカギは、各自治体がDXを進める担い手をいかに育てるかにかかってもいるのだ。地方に圧倒的に不足するデジタル人材、この養成と確保こそが、「デジタル田園都市国家構想」の実現を左右する。そのために各自治体の挑戦を期待したい。

 2016年3月、驚くニュースが伝えられた。グーグル傘下の会社が開発したAIの囲碁プログラムが、世界的な韓国のプロ棋士を敗ったのだ。AIが注目される第一歩となったが、囲碁や将棋などのゲームにとどまらず、あらゆる面での活用が一気に広がりを見せた。政府のデジタル庁の設置が象徴的であるが、その広がりは地方自治体にも押し寄せて久しい。

 北九州市では、産学官民が連携してデジタル人材の養成を推進している。愛媛県でも同様の取り組みを行っているが、これらの人材は必要であるため急がねばならない。自治体にしても、各企業にしてもトップの意識改革が求められ、DXを進めねばならない。北九州市は、「北九州DX推進計画」を21年12月に策定したという。そして市職員が自作のアプリによって業務の効率化とペーパーレス化を実現したと聞く。外部業者に頼らず、市職員のITスキルの向上によって大きな利益をもたらせた好例であろう。どの自治体も職員のITスキルの向上を目指さねばならない。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒