【地方再生・創生論 347】人口問題は「国家の全て」 松浪健四郎


 大阪も東京も高校の授業料の無償化を行う。大阪の私立高の経営者たちは、若干オーバーする費用の負担をせねばならないため、かなり不満をもつ。が、世論には対抗できず、無償化は進む。東京は高校(公私立)だけにとどまらず、都立大の授業料も無償化させるという。少子化の対応策で、教育費負担を軽減させるための策であるが、なんとなく日本も社会主義の方向へ走っている印象を受ける。

 「苦学」という言葉はなくなった。奨学金制度も充実していて、アルバイトしながら大学に通える。

 多くの主要大学は、夜間(二部)の学部を廃止する傾向にあり、廃止した学部の定員枠を一部の学部に移行させている。「苦学」する学生が減少し、夜間の経営が難しくなってきたのだ。戦後活躍した政治家や実業家に夜間の卒業生が多数いたが、これからはアルバイト経験者はいても苦学生はいなくなろうか。

 少子化対策のため、各自治体は競争せねばならなくなってきた。先鞭(せんべん)をつけた兵庫県の明石市、子育てに熱心に取り組み人口までも増加させた。財政的にどの自治体も苦しむが、柱とすべき政策が明確であれば、魅力的な自治体となる好例を明石市が作った。

 少子化対策を特化させた明石市は、政府までも動かす。岸田内閣は、異次元の政策をもって人口減少を食い止めようと少子化対策を重視する。

 自民党は昨年末、「こども大綱」「こども未来戦略」の政策を推進することを決めた。実行されれば、政府の子育て支援関連支出が、ついに経済協力開発機構(OECD)平均を超えることになる。

 OECDのトップを走るスウェーデンと肩を並べる状況となるが、なぜもっと早く少子化対策を政府が重視しなかったのか悔やまれる。

 令和6年9月分まで、中学校修了まで児童手当が支給されるが、960万円未満という所得制限(年収)があった。だが、10月分以降は、児童手当は高校生(18歳到達後の最初の年度末まで)にまでが支給対象となる。しかも所得制限なしだから、児童手当は抜本的に拡充される。

 平成時代から児童手当を今回のようにしておれば、少子化は妨げたかもしれない。児童手当の金額も増額されるので、各自治体は詳細をきちんと広報すべきである。

 また、出産・子育て応援交付金についても、経済的支援が厚くなる。妊娠届出時に5万円が給付され、出生届時には子どもの人数に応じて1人5万円が給付される。今までの応援交付金は、1人の出生で10万円だったが、2人目、3人目と多く出産することによって増額される仕組み、多人数家族の誕生を期待している。

 育児休業給付率も引き上げられる。これまでは、ケチくさいややこしい給付率であったが、かなり引き上げられる。男性も育児に協力しやすくなっているに加え、手取りが大きくなっている。政府の育児に取り組む姿勢が伝わってくる。育児は女性の仕事と決めつけていた日本社会も大きく変化したのである。

 新たに「こども誰でも通園制度」(仮称)ができる。現行の幼児教育と保育給付だけの制度から、就労要件に関係なく時間単位で柔軟に利用できる新たな通園給付を始める。令和7年度には制度化し、全国の自治体においても実施できるように法制化するという。

 「育児時短就業給付」(仮称)の創設も考えられている。育児のために時短勤務を選択した場合、賃金が低下したが、その10%を新しい制度によって給付するという。子育ても大切だが、仕事も大切、この考えに政府は対応する制度を創設しようとしているのだ。

 子育て支援策は、大きく変化する。政府は家族関係社会支出を平成28年度の倍にする。そうすることによって、OECDのトップ水準にあるスウェーデンを抜くことになる。

 遅きに失した感があるが、広く国民に知らせる必要がある。人口問題こそが、まず国家の基本であるばかりか、全てであると私は考える。

 
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