【2025新春 大手ホテルチェーントップ座談会】三井不動産ホテルマネジメント × 東急ホテルズ&リゾーツ × アパグループ


インバウンド活況宿泊単価も上昇 現況と戦略を聞く

 過去最高記録を更新し続ける訪日客数とそれに伴う宿泊単価の伸びで特に都市部の宿泊施設は活況を呈している。一方で人手不足問題は深刻。訪日客をターゲットにした外資ブランドホテルも続々と開業している。大手チェーンホテル3社のトップにお集まりいただき、各社の現況、戦略などを聞いた。司会は玉井和博氏(立教大学観光研究所特任研究員)。座談会を終えた玉井氏は「復活したインバウンド需要を背景に日本進出を加速させている海外ブランドホテルに対し、国内勢としてホテル事業をけん引する今回の3ホテルも順調に推移する中、インバウンドのみならず、ビジネス等の国内需要対応や特に地方観光との関わり合い方が今度のポイントになるだろう」と語った。(東京都千代田区の帝国ホテル東京で)【kankokokeizai.com編集長・江口英一】

(出席者)

三井不動産ホテルマネジメント 代表取締役社長 雀部 優氏

東急ホテルズ&リゾーツ 取締役社長 村井 淳氏

アパグループ 社長兼最高経営責任者(CEO) 元谷一志氏

司会=立教大学観光研究所 特任研究員 玉井和博氏

 

 ――コロナ禍後の状況変化と24年度はどんな年だったかについて教えてほしい。(玉井)

玉井

 

 雀部 24年上期は売上高も利益も過去最高を記録した。 ほぼ全ての事業で過去最高だった。

 現在の課題はGOP(粗利)の最大化と人材の確保。GOPについてだが、コロナ禍前は稼働率100%を目指していたものを、ここ数年で稼働率は80~85%に抑えてADR(平均客室単価)を上げるという考え方にシフトした。その方が運営コストを圧縮できるし、オペレーション現場の負荷も低減できる。また、海外ゲストのさらなる獲得と直予約比率の向上にも注力している。人材確保については、採用、育成、離職防止に注力している。24年4月の新卒採用は約90名、25年4月も約90名。従来の倍の人数の新卒を採用している。中途採用も年間100名ほど。ホテル業界内からの転職も多く、即戦力として活躍している。外国籍スタッフの採用も進めており、その国籍は18カ国にわたる。

 この1~2年強化しているのは三井不動産グループ連携。ららぽーと、三井アウトレットパークを運営している三井不動産商業マネジメントが、三井ショッピングパークメンバーズという約1350万人の会員組織を持っているのだが、この顧客層は私たちのホテルの国内顧客層と親和性が高いので、ポイント連携を始めた。また、三井不動産グループのラグジュアリ―・リゾートホテルとの連携も行っている。三井不動産直営ホテルの「ハレクラニ沖縄」に当社社員3名を1年間、研修出向させ、ラグジュアリーホテルのホスピタリティを学ばせている。 現在、宿泊客の約6割がインバウンド客で、約4割が国内客。ADRは特に東京・京都が上昇している状況で、かつてのビジネス出張客が離れていくのは避けられない。”記念日”など新しい切り口で国内客のニーズを掘り起こしている状況だ。

雀部氏

 

 村井 コロナ禍中の21年に着任し、ホテル事業を任された。22年度の下期あたりから回復基調がうかがえてきて、23・24年とさまざまな施策を打ち、それらが戦略として形になってきたというのが現状だ。特にブランディングと人財力の強化の2点には注力してきた。

 23年に開業した高層複合エンタメビル「東急歌舞伎町タワー」の中にラグジュアリーホテル「ベルスター東京(BELLSTAR TOKYO)」とライススタイルホテル「ホテルグルーヴ新宿(HOTEL GROOVE SHINJUKU)」の2ホテルの同時オープンがさらなる成長のドライバーとなっている。自社の集客力を強化すること、直予約比率を上げることが今の課題だ。

 

 元谷 新型コロナが23年5月8日に2類から5類感染症に移行したことで、訪日客が一気に戻った。弊社は11月期、24年度11月期と2期連続で過去最高益を更新した。24年11月期の連結決算は、売上高2200億円、経常利益700億円、利益率31.8%だった。高い経常利益率の源泉は弊社の3階建ての収益構造にある。所有、運営、ブランドの三つを守ることで、シナジーが発揮できている。来年は、大阪・関西万博が開催されることもあり、25年11月期のホテル部門売上高予測は前年度より約200億円増としている。現在のインバウンド宿泊客比率は約30%。RevPAR(レブパー・販売可能客室1室あたり売上高)は24年11月期が約9500円、25年11月期は1万円を見込んでいる。

 現在の課題は建築費の高騰、物流・ゼネコンの残業規制。関連して、新築案件の遅れ、間接コストの上昇、清掃員確保などの問題などもある。このままでは、新築物件で採算がとれなくなる恐れがある。対応策として、現在は8対2である直営とFC(フランチャイズ)の比率だが、長期的にはFC比率を増加させていくことを考えている。

 人口動態で地方部の縮減傾向が続いていく中で、地方に直接資本を投下するのではなく、各地域の協力業者様や有力なパートナー様と組んで、ネットワークを拡充していきたい。現在、直営とFCと提携ホテルで12万7千室。掲げている15万室構想は直営比率を下げて達成することになると思う。

元谷氏

 

 ――各社が特徴的な事業構造をお持ちだ。ポイントをご紹介いただきたい。

ペイウォール会員向け記事です。

【2025新春 大手ホテルチェーントップ座談会】三井不動産ホテルマネジメント × 東急ホテルズ&リゾーツ × アパグループ


インバウンド活況宿泊単価も上昇 現況と戦略を聞く

 過去最高記録を更新し続ける訪日客数とそれに伴う宿泊単価の伸びで特に都市部の宿泊施設は活況を呈している。一方で人手不足問題は深刻。訪日客をターゲットにした外資ブランドホテルも続々と開業している。大手チェーンホテル3社のトップにお集まりいただき、各社の現況、戦略などを聞いた。司会は玉井和博氏(立教大学観光研究所特任研究員)。座談会を終えた玉井氏は「復活したインバウンド需要を背景に日本進出を加速させている海外ブランドホテルに対し、国内勢としてホテル事業をけん引する今回の3ホテルも順調に推移する中、インバウンドのみならず、ビジネス等の国内需要対応や特に地方観光との関わり合い方が今度のポイントになるだろう」と語った。(東京都千代田区の帝国ホテル東京で)【kankokokeizai.com編集長・江口英一】

(出席者)

三井不動産ホテルマネジメント 代表取締役社長 雀部 優氏

東急ホテルズ&リゾーツ 取締役社長 村井 淳氏

アパグループ 社長兼最高経営責任者(CEO) 元谷一志氏

司会=立教大学観光研究所 特任研究員 玉井和博氏

 

 ――コロナ禍後の状況変化と24年度はどんな年だったかについて教えてほしい。(玉井)

玉井

 

 雀部 24年上期は売上高も利益も過去最高を記録した。 ほぼ全ての事業で過去最高だった。

 現在の課題はGOP(粗利)の最大化と人材の確保。GOPについてだが、コロナ禍前は稼働率100%を目指していたものを、ここ数年で稼働率は80~85%に抑えてADR(平均客室単価)を上げるという考え方にシフトした。その方が運営コストを圧縮できるし、オペレーション現場の負荷も低減できる。また、海外ゲストのさらなる獲得と直予約比率の向上にも注力している。人材確保については、採用、育成、離職防止に注力している。24年4月の新卒採用は約90名、25年4月も約90名。従来の倍の人数の新卒を採用している。中途採用も年間100名ほど。ホテル業界内からの転職も多く、即戦力として活躍している。外国籍スタッフの採用も進めており、その国籍は18カ国にわたる。

 この1~2年強化しているのは三井不動産グループ連携。ららぽーと、三井アウトレットパークを運営している三井不動産商業マネジメントが、三井ショッピングパークメンバーズという約1350万人の会員組織を持っているのだが、この顧客層は私たちのホテルの国内顧客層と親和性が高いので、ポイント連携を始めた。また、三井不動産グループのラグジュアリ―・リゾートホテルとの連携も行っている。三井不動産直営ホテルの「ハレクラニ沖縄」に当社社員3名を1年間、研修出向させ、ラグジュアリーホテルのホスピタリティを学ばせている。 現在、宿泊客の約6割がインバウンド客で、約4割が国内客。ADRは特に東京・京都が上昇している状況で、かつてのビジネス出張客が離れていくのは避けられない。”記念日”など新しい切り口で国内客のニーズを掘り起こしている状況だ。

雀部氏

 

 村井 コロナ禍中の21年に着任し、ホテル事業を任された。22年度の下期あたりから回復基調がうかがえてきて、23・24年とさまざまな施策を打ち、それらが戦略として形になってきたというのが現状だ。特にブランディングと人財力の強化の2点には注力してきた。

 23年に開業した高層複合エンタメビル「東急歌舞伎町タワー」の中にラグジュアリーホテル「ベルスター東京(BELLSTAR TOKYO)」とライススタイルホテル「ホテルグルーヴ新宿(HOTEL GROOVE SHINJUKU)」の2ホテルの同時オープンがさらなる成長のドライバーとなっている。自社の集客力を強化すること、直予約比率を上げることが今の課題だ。

 

 元谷 新型コロナが23年5月8日に2類から5類感染症に移行したことで、訪日客が一気に戻った。弊社は11月期、24年度11月期と2期連続で過去最高益を更新した。24年11月期の連結決算は、売上高2200億円、経常利益700億円、利益率31.8%だった。高い経常利益率の源泉は弊社の3階建ての収益構造にある。所有、運営、ブランドの三つを守ることで、シナジーが発揮できている。来年は、大阪・関西万博が開催されることもあり、25年11月期のホテル部門売上高予測は前年度より約200億円増としている。現在のインバウンド宿泊客比率は約30%。RevPAR(レブパー・販売可能客室1室あたり売上高)は24年11月期が約9500円、25年11月期は1万円を見込んでいる。

 現在の課題は建築費の高騰、物流・ゼネコンの残業規制。関連して、新築案件の遅れ、間接コストの上昇、清掃員確保などの問題などもある。このままでは、新築物件で採算がとれなくなる恐れがある。対応策として、現在は8対2である直営とFC(フランチャイズ)の比率だが、長期的にはFC比率を増加させていくことを考えている。

 人口動態で地方部の縮減傾向が続いていく中で、地方に直接資本を投下するのではなく、各地域の協力業者様や有力なパートナー様と組んで、ネットワークを拡充していきたい。現在、直営とFCと提携ホテルで12万7千室。掲げている15万室構想は直営比率を下げて達成することになると思う。

元谷氏

 

 ――各社が特徴的な事業構造をお持ちだ。ポイントをご紹介いただきたい。 (さらに…)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒