経営計画イコール数値計画という見方が大半を占めています。数値は計画、経過、結果全て具体的に示してくれます。だからお宿の内部や、銀行においても共通言語としての役割を担っています。
では数値が全てということで良いのか、ということについて考えてみましょう。
あなたのお宿では数値は主役で尊重されているが、それ以外のことは脇役に置かれ、実に曖昧なままになっていることはありませんか。
最近の傾向として、それではいけないと経営理念やパーパス(企業の存在意義)等、コンサルを中心に作成をお手伝いする場面が多いようですが、どこか言葉遊びに終わっている感じが否めません。
提案された経営者は「だから何なの?」となってしまいます。銀行から示された経営計画のフォームを見ると、アクションプランやSWOT(強み弱み)分析、3C(市場・顧客、競合、自社)分析や、ポジショニングマップがお決まりのように数値計画の後ろに鎮座しています。これらがどのように役立つのかよく分からず、結局は経営者や銀行が注目するところは数値のみのようです。
だから経営者は目標となる数値を達成させることを、最重要視しています。
でも今回はいったん数値を置いておきましょう。利益が出続けて、返済もできて、お金が余る状態にするためには、数値だけを考えていたのではいけないのです。
例えば5年後の数値計画が損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)ともに明らかになっているとしましょう。ではそれらとともに、あなたのお宿で大事な数値以外の5年後の姿は何でしょうか。今から5年後までに、進化させていきたいことは何ですか。これは人によってさまざまでしょう。何も浮かばない方もいれば、複数の切り口でビジョンを明確にしている経営者もいます。
例えば、お宿の商品力アップをあげたい方は、その切り口として、施設、料理、サービスのビジョンをそれぞれ描きました。現状はこういう状態であるが、5年後にはこうなっていたい。だから1年目には何をする、2年目には何をする、というふうに細分化した切り口でのアクションプランを立て、社員と共有しています。
また、スタッフの労働環境を最重視している経営者は給与体系、部署別の改善計画、モチベーションアップ、社内の魅力アップ計画を立てています。
後継者とのバトンタッチを計画されている方は、事業承継を5年間にわたって権限移譲計画を作成しているケースもあります。
数値計画だけで銀行と折り合いがついたからと、ほっとしていてはいけません。お宿はお客さまから選ばれる価値がなければなりません。そのためにお宿は常に進化させていくことが必須です。労働環境も今のままではもっと働き手が不足するでしょう。もはや宿泊業だから仕方がないといって、何も取り組んでいかないところは、それこそ大事な数値が悪くなっていきます。
数値に注目することは正解です。でも数値にしか注目しないのでは、逆効果です。あなたのお宿にとって、非財務的な面で取り組んでいくべき、重要なことは何でしょうか。
それは普段、このままではまずいなと思っていることが、本来腰を据えて取り組む必要がある、非財務的な問題です。
数値を少し脇に置いて、取りまとめてみる価値は十分あります。
失敗の法則その31
経営計画は数値計画だと思っている。
その結果、数値以外の面がおろそかになり、結果として数値が悪くなる。
だから、非財務的な経営計画を作成し、実践しよう。
https://www.ryokan-clinic.com/
(観光経済新聞11月25日号掲載コラム)