【失敗の法則から学ぶ~宿経営者の仕事大全37】お宿のスタッフに対してすべきこと 孫田 猛


 お宿で働くスタッフの問題はとても頭が痛いですよね。人手不足、スタッフ同士のトラブル、能力の個人差、モチベーションの低迷等々。あなたのお宿のスタッフにはさまざまな問題があるかもしれないけれど、そのスタッフがいなければ、お宿を存続することはできません。スタッフそれぞれの役割と活動が、あなたのお宿を成り立たせています。

 数あるお宿の中から、わが宿を選んでいただいたお客さまにはとても感謝。同様に数ある職場の中から、縁あってわが宿で働いてくれているスタッフにも、感謝の気持ちを言葉でしっかりと伝えましょう。

 お宿を存続させるためには、売り上げや利益を継続確保していかなければなりません。だから経営者は決算書や試算表、入り込み状況のオンハンド表、そして預金通帳の残高と今後の資金繰りのことで頭がいっぱいです。

 だからお宿のスタッフにまで、思いが行き届かないのが現状です。それは同様に働いているスタッフの気持ちも、経営者とかけ離れていきます。

 お金やお客さまと同様、スタッフはお宿にとって大切な存在であるにもかかわらず、総じてお宿はスタッフにエネルギーをかけていません。

 人手不足だと言いながら、無料のハローワークにしか募集をかけない。寮の修繕や補修は後回し。人件費比率が高いと銀行から指摘されて、スタッフの給料は棚上げ。最低賃金が上がると渋い顔をする。人材教育の計画や予算は皆無。だから人が育たない。もちろん気にはしているが、現状ではなかなか手を付けることができないという経営者もたくさんいらっしゃいます。ではもし利益が出て内部留保ができたとしたら、何をどの順序でそれらにとりかかるのでしょうか。

 お宿のスタッフはとても重要な存在ですよね。だとしたら、経営計画を立てる時に、スタッフに関する計画も一緒に立てませんか。

 私の実体験からではありますが、特に効果があった手法を五つご紹介します。

 (1)個人面談の実施~年2回、経営者がスタッフ一人一人と個人面談を実施します。内容は部門別目標遂行のための、個人行動目標の設定。現状、ギャップの認識。自分の強みを伸ばす方法、よくないことの認識と是正。これらを経営者と本人が共有し行動に落とし込み検証するため記録に残します。

 (2)教育研修の実施~部門別に年度計画(アクションプランと予算化)に落とし込みます。接遇のためのロールプレイング実施や、マニュアルのバージョンアップ。お宿を離れての研修。資格獲得、料理や接遇コンテストの応募実施等です。

 (3)「しくみ」の更新~組織図上、および職務分掌上で、不具合が生じているところに焦点を当て、改善を実施します。また、お宿独自の評価制度を作成し、個人面談や日頃の業務と連動させます。

 (4)「きまり」の運用~お宿のハウスルール(決まりごと)を作成、更新していきます。

 (5)求人のバージョンアップ~上記内容をわが宿で実施していることを告知した求人媒体を複数活用します。また新人募集のための学校訪問を、計画に入れます。

 いかがでしょうか。あなたのお宿において、スタッフの重要度に見合ったエネルギーを投入しましょう。

 ちなみに従業員という言葉は「業務に従う一員」という意味があるそうです。業務に従属する立場が強い印象がありますので、社員やスタッフという呼び名に変えた方が良い気がします。

失敗の法則その36
 スタッフに対して関心が薄いお宿の経営者。
 その結果、人に関するさまざまな弊害が起きる。
 だから、お金、お客さまと同様にスタッフには、さまざまなエネルギーを投入しよう。

 https://www.ryokan-clinic.com/


(観光経済新聞1月6日号掲載コラム)

 
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