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宿泊業は毎日客室を埋めていくため、集客活動を絶え間なく実施しなければなりません。生鮮品や日用品等と違って単価は高く、利用頻度が低いので、リピーターだけで成り立つビジネスではありません。
従って、常に新規顧客があなたのお宿に宿泊し続けなければビジネスが成り立たないということです。その数は、お宿の客室数に比例します。
いまさら何を言っているのか、と思いましたか。そう、当たり前のことなのですが、この前提条件を踏まえて、まだ来館したことのない人々に対し、見込み客を振り向かせ、予約のスイッチを押してもらうという一連のプロセスを、仕組みとして展開していますでしょうか。
これまでの集客実績やこれからの集客見込みに、何の不安もないのであれば、今まで通りの展開を続けていけばよろしいでしょう。しかし、そうではなく、集客実績が下降傾向にあり、そのトレンドに歯止めがかからない。集客見込みの傾向が読めなくなったというお宿については、それぞれの原因があるはずなので、個別具体的に対策を取らなければなりません。
OTA対策やレベニューマネジメントでトップラインを維持できるのであれば、それに越したことはないのですが、そもそもそれぞれのお宿が持っているコンテンツや集客媒体が、お客さまに振り向かせる機能が乏しいとしたら、ぜひこれに気づいてもらいたいと思います。
さて多くのお宿がホームページを持っています。今の時代、インスタやグーグルの方が大事だという意見もありますが、ツールがどうのこうのではありません。とても分かりやすいのでホームページを例にとってお話しします。
各お宿はホームページ作成に多額の費用をかけて作成しています。どこのホームページも写真はきれいだし、キャッチコピーや動画も取り入れ、どのページからでも予約のクリックができるようになっています。とてもいいお宿だから来て下さいと導いています。
では経営者であるあなたはホームページにどんな役割を持たせていますか。それを言語化し、制作者にそれを具現化するようにオーダーしたでしょうか。
いろいろな場面に同席しましたが、ほとんどの場合、お宿の写真をレイアウトし、プレゼンの場で、経営者はどれがいいのかを瞬間的、感覚的に決めている場面がほとんどです。
だから、制作者も見栄えが良く、操作がしやすく、インパクトがあることを重要視したものを作って提示し、それが選ばれるという構図です。
ホームページはあくまでも集客ツールです。上記の条件はとても重要な要素ではありますが、本筋ではありません。
見込み客はホームページがきれいなお宿に泊まりたいのでしょうか。簡単にクリックして予約にたどり着くお宿が一番重要なのでしょうか。きれいでインパクトのある料理や、雪景色のある露天風呂に入りたいだけでお宿を決めているのでしょうか。
あなたが描いているあなたのお宿のお客さまはどんな人でしょう。なんでわざわざお金と時間と労力をかけてお宿に泊まろうとしているのでしょうか。お宿に宿泊するという手段によって、何をしたいのでしょうか。お客さまが言葉にしない本当の理由を想像してください。そしてお宿の中に具現化し、メッセージとして集客ツールに盛り込んでください。
そしてお客さまがそれを見た瞬間、私が泊まるべきお宿はここだと気づかせてください。
失敗の法則その38
ホームページはお宿の紹介ツールだとしている。
その結果、見込み客の共感を得られない。
だから、宿泊する本当の理由を想像し、言語化し、具現化しよう。
https://www.ryokan-clinic.com/
(観光経済新聞2025年1月27日号連載コラム)