【失敗の法則から学ぶ~宿経営者の仕事大全42】地味だけどとっても大事なこと 孫田 猛


 勉強熱心で常に前向きな経営者は、お宿の課題を認識し、その解決に向けての取り組みが顕著です。

 具体的には毎月幹部会を開催し、予実検証とともに課題の可視化と共有化、そしてオペレーションの標準化を目指しています。

 そして計画した数値を達成させるため、それぞれの勘定科目に対して責任者を割り当て、PDCAサイクルを回す努力を惜しみません。

 これらマネジメント理論に基づくさまざまな手法は、宿泊業に限らず多くのビジネスに共通するものです。

 数多くの実証に基づくこれらの手法は、向き不向きのものがあるとはいえ、有効なスキームだと言えます。

 しかし現実を見ると、一生懸命まじめに経営に取り組んでいるのにも関わらず、うまく回らない。結果が伴わない。いつも途中で頓挫する。経営者だけが空回りしている感があり、幹部との一体感が感じられない。このようなお宿は少なくありません。

 課題解決に真っ向から取り組むだけでなく、経営理念やパーパス経営を取り入れた方がいいと関係先からアドバイスを受け、それも作った。事あるごとに全員で唱和し、クレドも全員に配布している。うまくいくこともあるが、その確率は決して高くはないというご相談が多く寄せられます。

 このようなお宿には、実は共通点があります。それは幹部会や現場を見ていればすぐに気づきます。まず職場の雰囲気が殺伐としています。幹部会はマンネリ化しています。現場同士でいざこざやトラブルが頻繁に発生しています。経営者とスタッフとの間には大きな壁のようなものが存在します。

 こういう環境の中で、さまざまな取り組みが行われています。スタッフは、社長の指示なので従いますが、感覚的にずれがあります。それは立場が違うからと言ってしまえばそれまでですが、うまく結果が出ません。

 このようなお宿にとって必要なことは、次の三つです。

 
 (1)もっと人にやさしくしよう。
 (2)もっと仕事を楽しくしよう。
 (3)もっと強い会社にしよう。
 

 いかがでしょうか。拍子抜けしましたか。でももう少しお付き合いください。

 人にやさしくないお宿とは、経営者やスタッフが、お客さまよりも自分の都合を常に優先しています。誰かがどこかで人の悪口を言っています。経営者がスタッフ一人一人に関心がありません。ありがとうという言葉はありません。全てが当たり前かどうかです。

 仕事が楽しくないお宿とは、スタッフが仕方なく仕事をしています。できる限り楽な作業をしています。仕事をさばいています。職場はお金を稼ぐところだと割り切っています。新しいことにチャレンジするのを極端に嫌います。

 弱い会社とは、財務的な欠点があります。何かアクシデントがあると、とたんに傾きます。お金がたまりません。スタッフに将来を語ることができません。経営状況が悪いのは、外部環境とスタッフが悪いからだと決めつけています。

 このような状況のまま、個別具体的な課題解決を図ろうとすること自体、無理があります。荒れた土地にいくら良い種を植えたところで、おいしい果実は実りません。

 難しく考える必要はありません。あなたのお宿では、上記三つが実現している状態というのは、どのような条件がそろった時ですか。経営者であるあなたが思い描き、先頭に立って実現させていきましょう。これが大前提です。

失敗の法則その41
 一生懸命にさまざまな取り組みを行っている。
 しかしその結果は、いつもうまくいかない。
 だからまずは、大前提となる三つの状態を、経営者自ら目指そう。

 https://www.ryokan-clinic.com/


(2025年2月17日号連載コラム)

 
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