
あなたのお宿では部門間で、さまざまないざこざが発生していませんか。
例えば接客と調理、フロントと接客、経理と営業等々。それぞれの部門のリーダーが集まる幹部会やちょっとしたミーティングでは、毎日どこかのお宿でほぼ同時刻にもめています。
その内容はどこのお宿でもだいたい同じです。それはあなたのお宿で、今日もめた内容、この1年もめた内容なのです。
このようなもめごとは業種の違いや規模の大小にかかわらず、あらゆる組織で発生しているようです。
例えば営業責任者はもっと新規獲得をしたいので、販促を強化したいと言えば、経理責任者はやみくもに営業コストをかけても成果が出るかどうか分からないものに、販促コストを言われるままにかけるわけにはいかない、というような具合です。
ではあなたのお宿ではこのような対立が発生した時に、経営者であるあなたがその場を仕切る必要があったとします。あなたはどのような采配を振るうでしょうか。
特定の幹部の影響力が大きい場合は、その人に合わせますか。この人にやめられては困るとか、へそを曲げられては困るというような場合にはその人に合わせますか。
また、あなたがワンマンである場合は、自分の意見を通しますか。
要は何を言っているのかよりも、誰が言ったかで決まることが多いのです。
さて、ある経営者はもめごとが発生した場合、それぞれの言い分を聞いた上で、ケースバイケースで判断しています。その経営者は、お互いの意見を聞いたところ、チームリーダーとして、どちらも自分の部署をより良くするためという前提に立った意見であり、どうしたらよいのか、分からなくなったとのことです。
各部門のリーダーは、自分もしくは自分の部署の立場から物事を見ています。従って物事の優先順位は自分もしくは自分の部署が被害を受けることを避ける、もしくは今以上に良くなることにあります。
このようなせめぎあいで、お互いの感情がヒートアップしている状況では、経営者の権限のもと、ある意思決定をしたとしても、お互いわだかまりがくすぶったままになります。そして同じようなことがやがておきます。
だから経営者は俯瞰(ふかん)したものの見方で全体最適を目指す必要があります。共通した全体目標、お宿としてあるべき姿というビジョンを全員に示してください。部門間で絡む場面では、それぞれのバランスを保たなければなりません。これらの塩梅を調整するのが経営者の役割です。
あなたがその時の雰囲気で意思決定するのでは、指示を受ける立場の人はたまりません。誰が言ったかで決まるのであれば、「あなたとその人だけでこの宿をやっていればいいじゃないか」となってしまいます。
立場の違いによる近視眼的な対立の解決方法は、俯瞰した共通のビジョンを示すことから始めます。そして向かう方向は本来同じだけれど、チームメンバーと役割が異なるために生じる齟齬(そご)だと教えます。
だからこれは本来の対立ではない。ビジョンにたどり着くための共同作業をしているのだから、そこでのお互いの役割を明確に整理し、示してあげてください。
部門間の主張という近視眼的なやり取りから、全体最適という高い舞台に、チーム全員をあなたが引っ張り上げましょう。
失敗の法則その42
部門間の主張が交錯した時、その場の雰囲気で意思決定してしまう。
その結果、何を言うかよりも誰が言ったかで物事が決まる雰囲気がまん延する。
だから全体最適を使ってビジョンを作成・共有しておき、意思決定の基軸としよう。
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