
ある飲食店経営者が手詰まり感を打破しようと、キッチンカーを購入しました。ところが何を販売するのか、どこに出店するのか、何も決まっていません。買い得のタイミングだったのかもしれませんが、衝動買いにしては高い買い物です。
「順序が逆じゃないか?」。ほとんどの人がそう思うでしょうね。
さて突然、選択を迫られるようなことは、日常頻繁にあります。買う?買わない?やる?やらない? このような問いに対し、あなたはどう対応していますか。即断することが多いという方。あるいはいったん保留し、どうするか考えるという慎重派でしょうか。
判断に迷うということは、判断基準が決まっていないということです。そのような時は、信頼のおけるパートナーや幹部に意見を求めたりします。しかし聞かれた人も、突然のことなので判断基準がなくても、思いつきで勢いよく即答する場合があります。
話がうまい人、自信たっぷりに見える人、影響力のある人が答えると、「なるほどそうだよね」と、安心し、納得してしまいがちです。キッチンカーを購入してしまった方も、そういう状況だったのかもしれません。
さあ、このようなケースにおいては考え方の整理が必要です。
まず、いきなり選択を迫られた時、「そもそもそれは何のため?」という「目的」を明確にします。次にこの選択候補は目的達成の方法として正しいのか、という問いに置き換えます。
この二つの問いがクリアされたなら、候補それぞれを仮に実行したとすると、ゴールはどうなるのか。そしてそのプロセスを実行する段階で、どのようなことが起きるのかを予想します。
いかがでしょう。これらを実践するためには三つの強制力を働かせることを意識します。
1番目の強制力。全ての行動には目的が伴います。しかし目的は普段意識の外にあります。だから、目的を強制的に顕在化させましょう。その方法は簡単です。先ほどの魔法の言葉「そもそも何のため?」です。とても頼もしい言葉ですよ。
2番目の強制力。目的に合致するということは、どんな姿なのか、絵を描くようにイメージしてみましょう。その絵には何が見えますか。何が描かれていればその絵が成り立ちますでしょうか。これが条件の列挙という強制力です。
3番目の強制力。仮説のシミュレーションを強制的に行います。複数の方法が候補として挙がっているとしましょう。それぞれが実行された場合のゴールとプロセスを予想します。それぞれのゴールは目的に合致していますか。イメージした絵と同じでしょうか。何かが違いますか。違うとすればどの条件が違いますか。実施のプロセス段階で、何か不具合が起きそうですか。それはあなたが許される範囲でしょうか。
このスキームは、日常起こるさまざまな課題に対して効力を発揮します。
あらかじめこれら三つの強制力を記述したシートを作成しておき、空欄にキーワードを埋められるようにしておきましょう。
即断を求められると、そのスピード感で答えなければ相手に悪い、と感じている方にとってはとても有効なツールです。
大事なのは、あなたにとって正しい判断です。即答することではありません。そのためには普段から有効なツールをあらかじめ準備しておき、いざという時にスムーズに活用しましょう。
失敗の法則その43
突然回答を迫られた場合、どうしたらよいか焦ってしまう。
その結果、根拠もなく即答してしまう。また保留しても結局どうしたらいいか分からない。
だから、正しい回答を導き出すためのスキーム(三つの強制力)をあらかじめ用意しておき、いざという時、活用しよう。
https://www.ryokan-clinic.com/
(観光経済新聞2025年3月3日号掲載コラム)