今回の新型コロナウイルス感染症による恐怖は、局地的なものではなく、世界規模であり、人々の心の中に強烈にすりこまれる結果、社会構造そのものに大きな影響を与える可能性があります。
例えば、勤務形態変化に関して考えてみましても、昨年来の働き方改革の浸透やシェアリングエコノミーの台頭等、他の外部環境を併せて考えますと、上記テレワーク等の取り組みは一時的なものではなく、今後も必要かつ重要な取り組みとして捉えるべきと言えます。
宿泊施設に求められる品質を考える場合、時代背景やトレンド、外部環境に応じて、変化する顧客の価値観に応じて宿泊施設に求められる品質自体も変化します。顧客が求める宿泊施設の「品質」については、「これまで求められた品質」とパンデミック宣言以降「今後求められる品質」との間に大きな変化が生じている可能性があります。以下では、弊社が実施したアンケート調査結果をご紹介したいと思います(全国男女千人に対するインターネットアンケート調査、2020年4月弊社実施)。
本アンケート調査は、1~5スタークラス別に宿泊施設を想定し、客室清掃内容に関して消毒除菌をどこまで求めるのかについて、回答用選択肢を(1)徹底した除菌消毒(2)ある程度触るところは除菌消毒(3)できる範囲で除菌消毒(4)特に関係ない―の4択とし、客室の清掃内容と選択される宿泊施設の関係を調べたものです。
調査の結果、5スタークラスであれば、(1)と(2)がなされていないと宿泊しないと回答した人の割合が77.1%、(3)まで加えますと、90.2%という結果でした。4スタークラスであれば、(1)と(2)がなされていないと宿泊しないと回答した人の割合が76.6%、(3)まで加えますと、91.2%という結果でした。3スタークラスであれば、(1)と(2)がなされていないと宿泊しないと回答した人の割合が71.5%、(3)まで加えますと、90.9%という結果でした。2スタークラスであれば、(1)と(2)がなされていないと宿泊しないと回答した人の割合が64.2%、(3)まで加えますと、90.1%という結果でした。1スタークラスであれば、(1)と(2)がなされていないと宿泊しないと回答した人の割合が58.8%、(3)まで加えますと、87.3%という結果でした。
上記の通り客室清掃に当たって「ある程度触るところまで除菌消毒してほしい」との回答が非常に多く見られます。これは、除菌消毒「してほしい」というものではなく、「していないと選択したくない」という安全安心が根幹である宿泊市場に対する新たなメッセージであり、ポスト・コロナ時代において、今回の恐怖心が上記の通り人々の価値観に大きな影響を与える可能性を鑑みますと、上記顧客ニーズは今後十分検討を要すべき内容であるとともに、その他安全性・安心感関連サービスを含めて新たな差別化戦略ともなり得るのかもしれません。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史