【寄稿】持続可能で客が呼べる宿泊業界を Omotecort代表取締役・サステナビリティ・コーディネーター 井川今日子


 「最後の楽園」と称され、エルニドエリアで最初のリゾート「ミニロック・アイランドリゾー ト」。持続可能などという言葉が無かった頃からレスポンシブルツーリズムを目指し、維持してこられたのは、「このリゾートの最大の目的は地域社会との調和であり、手を携えて環境保全に取り組むこと」という出発点にあると言います。

 エルニドは、フィリピン西部にあるパラワン島北部のエリア。マニラから1時間半ほどのプロペラ機でのフライトで、エルニドのLio(リオ)空港に到着します。

 エルニドでは「1島1リゾート」制を敷いていて、一つの島に一つのリゾートしかありません。七つの島がリゾートを持っていますが、その占有率は1%にも満たないといわれています。このようなルールを取り入れることで、乱開発から逃れ、環境と観光のバランスを保ってきました。

 また、観光客へは、(1)写真以外何もとらないこと(2)足跡以外何も残さないこと(3)思い出以外何も持って行かないこと(4)時間以外何もつぶさないこと―というシンプルかつ力強い言葉で四つのルールを提唱し、啓蒙を促しています。

 リオ空港からミニロック島までは小型船(船の形態によって20~45分)での移動です。この島にあるリゾート「ミニロック・アイランドリゾート」ではさまざまなサステナビリティに取り組んでいます。詳しい説明は省きますが、ローカルの女性がブナの葉で編んだレイや手提げ、スリッパ等の備品を採用しローカルの女性の自立支援をしていたり、海水を真水に処理した水の利活用、コンポストの導入、従業員教育、緻密なモニタリングによる需要予測(による食品廃棄の削減)、環境に配慮したマリンスポーツ、生態系の保護、環境保全等々です。

 滞在時にインタビューをしたリゾートのサステナビリティオフィサーによると、「ECO―LUXURY」なリゾートだから泊まりに来るという(私のような)旅行者は非常に少なく、今後いかにそれをプロモーションに活用していくかという点に課題感を感じていると言います。

 また、リゾート側でいくらプラスチックの利用を制限したところで、宿泊客がシングルユースのプラスチック製品をリゾートに持ち込み廃棄してしまうため、計画通りに減らしていくことが難しいことも嘆いていました。

 ミニロック・アイランドリゾート(を含むエルニドリゾート)は、コンデ・ナスト・トラベラー誌の「2023年読者が選ぶベストリゾート」として、フィリピン第1位、アジア第2位、世界第39位にランクインしたリゾートです。

 このような世界的なリゾートでさえも、持続可能性では客は呼べないと言います。

 地球温暖化への危機感を持ち、環境に配慮した行動として、マイボトルやエコバッグを常時携帯を選択する人は確実に増えていますが、非日常である旅行において、環境に配慮した滞在先を選択するという機運になるにはまだまだ相当の時間がかかるのでしょう。

 旅行者に求められようが、求められまいが、環境に配慮した経営を推進していくことが宿泊事業者のベネフィットにつながる土壌づくりがいまの観光業界に求められています。

 
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