観光経済新聞、塗料報知、農村ニュース、ハウジング・トリビューンの専門4紙誌はメディアパートナーシップを締結しました。今後、専門ジャーナリズムである各媒体の強みを生かして情報発信力を高めていくとともに、さらなる紙誌面の充実を図る考えです。
活動の第1弾として共同キャンペーン「地域から元気を 地方創生が生み出す未来」を展開します。2022年の1年間をかけ、今、各地で芽吹いている地域活性化の動きを、観光、農業、住宅・建設業などの視点からレポートします。
観光経済新聞
交流人口の拡大へ 体験施設と農家民泊が人気
綾部市定住交流部観光交流課によると、同市の年間観光入込客数(暦年)は、2020年が31万1559人。前年(19年、59万9043人)から48.0%減とおよそ半減した。新型コロナウイルス感染症の影響を同市も大きく受けた。
ただ、近年は右肩上がりの傾向で、16年は68万2817人と、過去最高の模様。以降も60万人前後で推移している。
05年(34万760人)から10年間でおよそ倍増している。「あやべグンゼスクエア」の開業(14年)や、京都縦貫自動車道の全線開通(15年)が影響しているようだが、農村と都市との交流による関係人口の拡大を目指す同市の官民挙げての取り組みも大きい。
核となっている施設の一つが「里山交流研修センター」だ。廃校した小学校の施設を活用した交流体験施設で、「廃校前のにぎわいをなくさないよう、地域の交流拠点として活用してほしい」という地元の要望を受けて00年、市が設置した。施設の運営は開業時から「特定非営利活動法人里山ねっと・あやべ」が行い、石窯でのパンとピザ焼き、流しそうめん、そば打ち、炭焼き、田植えと、訪れた人に「田舎ならでは」の体験を地元のインストラクターらの指導で楽しんでもらっている(現在はコロナ禍で休止中が多い)。
利用者は大阪など都会から来た人が多いが、家族での旅行や幼稚園の遠足、学生の合宿など、形態はさまざま。施設には教室を改装した宿泊室もあり、「『都会ではできない体験ができる』『学校に泊まること自体が貴重な体験』とお客さまから好評です」と同法人の森慎一事務局長は話す。利用者数はコロナ禍前が年間およそ1万人。うち宿泊は千人ほど。廃校利用の先駆的な成功事例と全国からの視察も多い。
ウィズコロナをにらみ、体験プログラムは昨今の団体から個人への旅行形態の変化にも合わせてさらにバラエティに富んだ内容に拡充する予定だ。
また綾部市には田舎暮らしを疑似体験できる農家民宿が約20軒そろう。そのうちの一つ、「里山ゲストハウス クチュール」は、大阪市出身の工忠(くちゅう)照幸氏が同市に移住、古民家をリノベーションして15年にオープンした。
市の東部、上林地区の「宿から最初の信号まで車で15分」というのどかな田園地帯に位置する。海外のOTA(オンライン・トラベル・エージェント)と契約し、コロナ禍前の19年は年間宿泊者数延べ580人のうち、約半分の300人弱が外国人。同市の年間外国人宿泊者数が約千人だから、3分の1ほどが同館に宿泊していた格好だ。都会から少し離れた里山の自然の中で、子どもを思い切り遊ばせたいというファミリーのニーズに応えているという。コロナ禍の現在は日本人客が9割以上だが、工忠氏のように都会から同市への移住を希望したり、同市で農家民宿を営んでみたいという人たちが視察を兼ねて訪れることが多いという。
総合旅行業務取扱管理者の資格を持つ工忠氏は旅行会社「MATATABI」も設立。農業体験や合気道体験といった、同市のさまざまな資源を生かした地域発の着地型ツアーを催行している。移住を希望する人に向けて、既に同市で生活をする人々の体験談を聞くツアーもリアルとオンラインで催行している。
塗料報知
景観にマッチした古民家再生を
里山ねっと・あやべ(綾部市里山交流研修センター)は、全国に先駆けて農村と都市の交流を目指した拠点施設として2000年に開業。閉校となった小学校施設を活用した里山交流館など、複数の多様な施設が整備され、綾部市の文化発信などに貢献している。
しかし、施設の老朽化、耐震化の必要などから施設の在り方の見直しが行われている。
施設整備の基本方針として、安全・安心の確保や、里山にふさわしい景観を掲げる。
抗ウイルス性や高耐候性といった機能に加え、景観色彩の提案できる仕上げ材が活用されるチャンスを見いだせる。
民間レベルで注目できるのは“田舎暮らし”を身近に感じてもらうための体験施設やイベントを企画している田舎生活研究所で、綾部市の活性化に努める。
同研究所では、綾部市に多く残る古民家の再生を地域社会への貢献として、重要なことの一つに位置付けている。
ただ単にぜいたくなリフォームを施すのではなく、“綾部の景観”にマッチした再生で里山の自然・綾部の魅力を発信する。
実際に移住し、再生された古民家で飲食店等を営む人が増えている。
▷WEB塗料報知
農村ニュース
新規就農へ府と連携し支援事業
いくつかある定住における課題の一つが仕事の確保。地方においては農業も重要な選択肢だ。定住・移住を積極的に進める綾部市において、新規就農に向けてどのような取り組みが行われているのか。綾部市農政課の大槻氏に話を聞いた。
綾部市における新規就農者の現状は年間1人程度と厳しい状況。そうした中でもできる限り多くの人に就農してもらうため、綾部市では京都府と連携し、最長2年間就農予定地で指導者のもとで農業を学べる、府の「農業経営チャレンジ支援事業」などで支援している。
一方、就農後の課題としては、いかに経営を成り立たせていくかだと指摘。「重要なのはいかに売るか。JAだけでなく独自の販路を拡大し、『自らもうける力』をつけることが大切」。このため市では、新規就農に当たって、京野菜として差別化しやすい「万願寺とうがらし」の栽培を薦めている。
こうした取り組みの結果、綾部市では、万願寺とうがらし栽培において就農5年で法人化にまでつながった例や圃場(ほじょう)内に直売所を作り、地域の農業者とも連携しながら地域住民に農産物を販売するといった取り組みも生まれてきている。
▷農業関連のニュースなら農業専門紙「農村ニュース」
ハウジング・トリビューン
移住者の受け皿に空き家を活用
綾部市が3年に1回行っている「空き家実態調査」によると市内全域の空き家総数は1015戸で、そのうち835戸が使用可能な住宅だ。移住・定住者の住まいとして、これらの空き家活用に力を入れている。
空き家バンクへの登録は現在57件で、多い時でも80件程度。空き家の数に対して登録数が少ない理由については、さまざまな理由から空き家を放置している人のほか、今は空き家でも将来は子供や孫に相続したい、ごくたまに帰省するなど、さまざまな理由から放置されているケースが多いためだ。
「市内にはまだまだ多くの空き家があり、バンクへの登録を促進することで、さらに移住促進につなげることができる」(塩見課長補佐)と、定住希望登録者1400世帯の受け皿を用意することで定住促進にさらに加速をつけたい考えだ。
空き家の流動化、つまり空き家所有者に、その提供を促す仕組みとしては「空き家流動化報奨金」を用意。これは空き家を空き家バンクに登録し、移住者との契約が成立した時に10万円(うち5万円は京都府の補助)の謝礼を支払う制度。
また納税通知書に空き家バンクのチラシを入れるなど、細かな対策を取る。
▷Housing Tribune Online – 創樹社
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