【専門紙・誌4社共同企画 地方創生が生み出す未来】伊自良の里(福井県福井市)農村ニュース


取材日は上味見みらいファームで田植えの真っ最中

生産を支える農事組合法人

 福井県内でも有数の名水「こしょうずの湧水」が象徴する「おいしい水」と寒暖差がもたらす「おいしいお米」を生産している上味見地区。その農業生産を支えているのが2020年に設立された農事組合法人「上味見みらいファーム」(清水重勝代表)だ。取材した5月4日はまさに田植えの真っ最中。酒米の500万石の植え付けの合間に清水代表にお話を伺った。

 同法人は地域内での担い手の高齢化・減少に危機感を持った4件の農家が立ち上げた。「農地を集約し、法人化することで、少しでも農業に取り組みやすくなり、引き継いでくれる人が現れれば」と思いがあってのことだという。

 法人の栽培面積は23ヘクタール。うち酒米が3ヘクタール、飼料用米が2ヘクタールでほかは主食用米。主食用米の品種はコシヒカリが主でいちほまれも作っている。販売については、ほとんどが直販。また、飼料用米については、地区内の養鶏場(株式会社伊自良たまご)に供給しており、地域内での耕畜連携ができているようだ。さらに酒米については、福井市内の酒造会社が連携し、清酒づくりに取り組んでいる。

 同法人では、使用する農機も持ち寄りが多い。田植機などは個人所有のものを持ち寄って利用。法人立ち上げ後に設置された乾燥調製施設は、集落内で使われなくなった工場を活用し、4人それぞれが使用していた乾燥機4台を持ち寄り、補助金を利用し1台を増設して計5台を使用。時期になるとフル稼働だという。

 さらにドローンも導入しており、農薬散布で用いている。「地域に点在するわれわれのほ場を防除する際、広域の共同防除では、適期に行うのは難しい。適期防除に向けて導入した。もう一つの理由としてはこうした新しいことをやることで若者が興味を引く農業ができればと考えたから」と語った。

 こうしたさまざまな取り組みを進めているものの新たな担い手の定着には厳しい状況が続いている。「一番の課題は人手不足。いかに若い人に定着してもらうかが難しい。われわれの水田農業、特に中山間地においては、畦畔(けいはん)の草刈りをはじめ重労働が多く、定着しづらいのが実情」だという。そうした中で重労働を軽減できるスマート農業については関心が高い。前述の通り、ドローンを導入しているほか、「GPS付き農機なども導入できれば一定の効果が期待できると思っているが、コスト面が課題だ。また、われわれのような中山間地では、農地の集約化が進みづらい小さなほ場が多く、スマート農業の持つ力をフルに生かせないのではとも懸念しており、なかなか導入には至っていない」。その上で「中山間地は畦畔の面積が広く、急なものが多い。急傾斜に対応し、かつできるだけ人手がかからない草刈機があれば、(コスト面もあるが)ほしい」と要望を語った。

 今後については、地域の農業、そして地域自体を守りたいと力強く語る。「そのためにも将来にわたって農業を続けていけるよう新たな力が必要だ。地域では少しずつではあるが、移住者が誕生している。地域に移住し、就農してもらえるよう、『若者に興味を持ってもらえる農業』を目指す。それと同時に農業の、われわれの地域の魅力をより積極的に発信したい」と語った。

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