【専門紙・誌4社共同企画 地方創生が生み出す未来】伊自良の里(福井県福井市)ハウジング・トリビューン


伊藤氏の後輩も空き家を活用して暮らしている

空き家を移住者にあっせん

 福井市の高齢化率(2022年5月1日現在、65歳以上人口比率)は29.57%と、10年前の23.59%から約6ポイント増と確実に高齢化が進みつつある。他地域と同様に、市中心部よりも山間部の高齢化率が高く、美山地区(旧美山町)は44・89%と市全体平均より15ポイント程度高い。一方、美山地区の世帯数(2022年5月1日現在)は1367世帯と、10年前の1443世帯から76世帯減少した。

 「伊自良・いやしの郷づくり構想」を推進する上味見地域は、美山地区の南東に位置する飯降山麓の里山で、現在、約130世帯、300人が暮らす。美山地区の中でも高齢化率が高く、約6割に達しているという。高齢化に伴う人口の自然減や世帯数の減少に伴い、空き家の発生が課題となっている。

 福井市は2018年3月に「福井市空き家等対策計画」を策定し、「適正な管理がされていない空き家等の増加抑制」の取り組みを進めている。同計画策定に先立ち2017年に行った「福井市空き家等実態調査」によると、市内全域において「空き家等ではないかと思われる」物件は1695件。このうち美山地区は48件であり、世帯数に占める割合は3・35%であった。上味見地域の現在の空き家の状況については定かではないが、多様な空き家が発生していることは間違いない。

 福井市自然体験交流推進協議会や一般社団法人伊自良の里振興協会などさまざまな面から同地区の活性化に携わる伊藤弘晃氏によると、古民家の空き家はそれほど多くはなく、比較的近年のものが多いそう。とはいっても、浄化槽が取り入れられる以前のくみ取り式の住宅から、築浅の住宅まで築年数には大きな幅がある。

 いずれも所有者は明確であり、それぞれの持ち主が空き家バンクに登録するなどの活用を図っているが、その大きな柱が移住者向け住宅だ。上味見地域には、この10年間で27人が移住してきているが、移住者向け住宅として、また、農家民宿として空き家が売買、賃貸されている。そのあっせんは組織や制度ではなく、住民など人と人とのつながりの中で行われることが多いそうだ。

 一方、移住者に目を移すと、東京都からの移住者もいるものの、多くが福井県内または兵庫県、愛知県など近県からの移住であり、20~40代の若年層が大半を占める。

 農事組合法人上味見みらいファームが活動しており、こうした暮らしぶりに憧れる人、NPO法人自然体験共学センターのスタッフ、また、福井工業大学など大学連携を進める中での縁あっての移住、という三つのパターンの移住が多い。

 福井市は2020年に、中山村地域において、都市に住む人材の受け入れ活動に集落全体で積極的に取り組む意欲のある集落を認定する「Welcome集落事業」をスタートした。認定を受けることでイベント開催や農家民宿施設整備などに対して補助を受けることができる。

 上味見地域は一昨年に認定を受けたものの、折からの新型コロナの感染拡大を受け、移住促進を積極的に進めることが難しかった。「今年度は、状況を見ながら交流事業などを進めていきたい」(伊藤氏)としている。

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