阪神・淡路大震災における塗料・塗装業界関係の被害状況等について、神戸市に本社を置く業界企業に話を聞いた。
それによると、同社では激震地域に4カ所の事業所があった。社員には人的被害はなかったものの、建物は半壊状態。倉庫内の積み上げていた商品が荷崩れを起こしたほか、一部石油缶の破損による塗料漏れが発生したという。さらに、当時JR神戸線の高架下にあった営業所が、JRの高架補強工事に伴い、解体並びに建て替えとなっている。
同社代表の話では、震災発生から29年が経過し、企業としても個人としても復興は終了しているという意識だという。現在は、復興策というより次の大きな災害が発生した時の対応の方が気になるとのこと。30年近く経過して、震災を経験していない若い人も多くなっているので、瞬間的には経験を生かした対応ができないのではないかと懸念している。
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阪神・淡路大震災の復興において、業界に関わるシンボル的なものの一つに神戸市長田区若松公園にある「鉄人28号」の原寸大モニュメントが挙げられよう。
このモニュメントは、「鉄人28号」の作者で同市出身の漫画家である故・横山光輝さんにちなみ、2009年に完成したもの。鋼鉄製で高さ約15メートルである。
屋外にさらされているため、足の部分を中心に表面の塗装に傷みが目立つようになり、2016年10月17日から塗り替え作業を開始。塗り直しを終えて11月6日にお披露目セレモニーを開いている。鉄人はこれまでの暗めの青色から、より原作漫画に近い鮮やかなコバルトブルーに変身した姿を現した。
セレモニーではモニュメントを管理するNPO法人「KOBE鉄人プロジェクト」の正岡健二理事長が「新長田のランドマークとして、これからも長田や神戸の街を見守ってほしい」とあいさつ。地元の音楽団体が鉄人28号のテーマ曲を演奏して盛り上げている。
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阪神・淡路大震災から29年を迎える神戸市。震災後は、思うように街づくりが進められなかった時期が続いた。その後、行財政改革への取り組みで財政状況を全国に20市ある政令指定都市の中で上位にまで回復している。これにより、都心三宮やウォーターフロントのほか、地域の拠点駅の駅前再生、里山・農村地域の活性化など新しい視点で自然との共生に取り組んでいる。
神戸2025ビジョンを掲げている同市では「海と山が育むグローバル貢献都市」をキャッチフレーズにしている。神戸の過去・現在・未来を象徴していて、海と山がある豊かな自然と共に生き、SDGsあるいは自然との共生という価値観を体現。「グローバル貢献都市」には、グローバルな社会の中で貢献できる存在でありたいという思いが込められている。震災で国内外からの支援に対する感謝の気持ちがあり、各地でおこる震災や水害などに救援活動を行っている。
三宮の再整備は、さまざまな施設をリニューアルして魅力あるエリア(北野、三宮、元町、旧居留地、ウォーターフロントなど)の回遊性につなげていくことを考えている。人々が街を回遊すれば、さまざまな出会いやコミュニケーションが生まれ、そこからにぎわいが生まれる。
塗り替えたシンボルの「鉄人28号」