【専門紙誌の視点で見る阪神・淡路大震災からの復興】 震災を機に機械化 復興期にはブランド化進む 農村ニュース


野島地区の断層による田面の亀裂(データベース資料より)

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は農業面でも大きな被害を発生させた。兵庫県がまとめた復興10年総括検証・提言データベース(以下、データベース)および昨年3月と今年3月に刊行された「兵庫県150周年記念 兵庫県史~この50年の歩み」から改めて農業関係の被害とその後の復興に焦点を当ててみてみたい。

 兵庫県がデータベースのうち、「食料の安定供給を支える農林水産業の活性化」では、阪神・淡路大震災の被害について、総額で1181億4686万円とまとめている。具体的には農地・農業用施設(あぜやため池等のひび割れ・崩壊)は4049件、243億7500万円、農作物が3ヘクタール、1490万円、農業用共同利用施設(育苗施設・農業倉庫など)が27件、53億8009万円、農業用個人施設(畜舎・たまねぎ小屋・温室など)が2070件、48億5235万円など。また、畜産が合計で2873万円。ブロイラー1万1千羽、乳用牛29頭、肉用牛8頭などの被害があった。

 被害の状況について、具体的にみてみる。ため池については、堤体における前法面の滑落、ひび割れ(内部までの亀裂)などの被害が主だったが、大半は縦断方向の亀裂だった。また、農地については淡路地域を中心に畦畔(けいはん)の滑落や田面の亀裂などの被害が発生している。

 こうした状況に対し、データベースでは、復興過程における取り組みとその成果を(1)初動対応期(2)復旧期(平成7~9年)(3)復興期(平成10~16年)に分割し検証している。
 ため池については、被災ため池1222カ所のうち、1111カ所については応急工事を実施して農業用水を確保。被災ため池にかかる受益面積5016ヘクタールのうち、国・県・市町・ため池管理者・業者の連携協力体制のもと6割強の作付けを確保できた。

 一方、農産園芸については、被災時が冬場のため初動対応期には被害がほとんどなかったが、復旧期には、野菜生産流通体制の高度化や地域特産農作物用機械の開発促進を、復興期は引き続き開発促進とともにその普及支援に取り組んでおり、たまねぎ収穫機・移植機の開発導入につながっている。

 また、「兵庫県150周年記念 兵庫県史~この50年の歩み」では震災からの復興後の動きとして、地産地消や農林水産物のブランド化が注目されるようになった、と指摘。

 その流れを受け、県が、生産者と消費者の顔が見える関係づくりを目指し、地産地消活動を推進するとともに、新たに「ひょうご安心ブランド認定制度」を開始。環境に配慮した生産方式を導入する生産集団の認定や残留農薬等の自主検査の促進に取り組んだ。具体的には、化学肥料・農薬の使用を慣行レベルの5割以上減らし、残留農薬を国の基準の10分の1以下とするなどの基準をもとに生産された農産物を県が認証するもので、農地の生産力と良好な営農環境を持続させることで経済的な持続性の確保を目指すもの。平成13年12月のスタートから5年で、ひょうご安心ブランドの作付面積は大幅に増加、定着している。

 この取り組みは現在農水省が進めている「みどりの食料システム戦略」を先んじる取り組みであり、高く評価される。


野島地区の断層による田面の亀裂(データベース資料より)

 
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