【専門紙誌5社共同企画】各紙誌の視点で見る東日本大震災からの復興 未曽有の被害に対応 ハウジング・トリビューン


応急仮設住宅に新たな広がり

 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、震度6弱~7の揺れが広範囲にわたって発生、9メートルを超える津波も発生したことから、非常に多くの住家被害が発生した。全壊12万2050棟、半壊28万3988棟、一部破損75万64棟に達する(令和6年3月8日時点)。

 こうした大規模な災害の中、従来の地震災害以上に大きな力を発揮したのが応急仮設住宅だ。全国の避難者2万9328人と、3万人近い避難者が発生する中、全体で5万3194戸の応急仮設住宅が建設、引き渡された。

 東日本大震災における応急仮設住宅の建設においては、その被害の甚大さなどからそれまでの地震災害とは異なる多くの課題への対策が求められた。

 まず挙げられるのが、絶対量の不足である。応急仮設住宅は短期間に1戸でも多くの建設・引き渡しが求められるが、広域かつ多くの被災者への支援には供給体制の不足が懸念された。その中で大きな役割を担ったのが「みなし仮設住宅」だ。民間の賃貸住宅を借り上げて応急仮設住宅として使用するやり方は阪神・淡路大震災や中越地震などでも行われたが、その活用は限定的であったが、国はその運用を改善、発災以降に被災者が契約したものであっても、自治体名義に置き換えた場合は災害救助法の適用とするとしたことで、その活用が一気に広がった。みなし仮設住宅の供給戸数は6万1千戸超えとなり、建設型の応急仮設住宅を上回ることとなった。

 もう一つ、供給不足への対応として、応急仮設住宅の多様化が進んだことがあげられる。建設型の応急仮設住宅の担い手として大きな存在である一般社団法人プレハブ建築協会は、傘下の規格建築部会の各社が建設に当たるだけでなく、ハウスメーカーの集まりである住宅部会もその役割を担った。最終的に同協会が手掛けた応急仮設住宅は4万3260戸を建設した。

 これら以外の建設型の応急仮設住宅は、各自治体が独自の取り組みを行った。例えば、住田町は町の第三セクターが同町産の木材を利用した戸建ての応急仮設住宅を建設。被災地の復興支援・雇用促進の視点から、各県などが公募で選定した地元事業者が地域材を活用した木造の応急仮設住宅の建設に取り組んだ。また、女川町ではコンテナを改造し輸入資材を使った2階建ての応急仮設住宅も建設された。

 一方、東日本大震災は東北地方という寒冷地で大きな被害が発生したことも大きな特徴であった。そのため、厚生労働省は応急仮設住宅に寒さ対策を施すよう各県に要請し、通常の仕様とは異なる寒さ対策が追加された。例えば、プレハブ建築協会の規格建築部会では、追加工事として各県の要請を踏まえ、外壁の断熱性能の向上、サッシの二重化などを行った。また、各戸出入り口に風除室を設置、入居者の要望があった場合にはエアコンの増設や暖房便座の設置なども行った。

 緊急的な避難から復旧・復興に向けての第一歩となる応急仮設住宅。これまで何回も建設が行われてきたが、自然災害の規模や地域などによって取り組み方は異なる。その新たな取り組みが積み重なり、次の災害時に生かされてきた。東日本大震災は未曽有の大規模災害であっただけに、そこで得た知見、経験が以降の被災地で生かされている。

 (ハウジング・トリビューン)

 
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